第五回「岡倉天心記念賞」受賞作品
  • 2017.12.4

審査委員会のもちまわり審査により、下記の著書/著者が受賞いたしました。

1、最優秀賞:『習近平の夢』矢吹晋(横浜市立大学名誉教授)、花伝社

【推薦文】同著は世界的な視野で中国のリーダー習近平主席の「夢」を解析し、特に米中関係の推移に対する検証を通じて両国間の奇妙な共存関係を浮き彫りにし、「チャイメリカ年表」をおそらく史上初めて作成した。南シナ海問題、AIIB問題などにおいて日本が誤った対応を重ねたことも国際法、国際関係の角度から鋭く指摘し、中国の勃興、朝鮮半島のありうる激変などを含むアジアの行方に日本は何をすべきかを考える上で啓発に富む好著である。ゆえに最優秀賞に推薦した。(朱建榮:学会副理事長、東洋学園大学教授)

2、学術奨励賞:『空洞化と属国化』坂本雅子(名古屋経済大学名誉教授)新日本出版

【推薦文】本書は、日本経済が長期停滞から抜け出せず、国内総生産の上昇が進まない中で、日本企業の海外進出が急速に進み、海外設備投資が急増している状況を具体的な事実をもとに実証的に論じた書である。親企業のみならず下請け企業も海外進出するようになり、80年代に日本を世界最大の債権国に押し上げた輸出力が急速に落ち込み、国内製造業の就業者数や出荷額も減少し、産業空洞化が進んでいる。
この書では、そうした日本経済の停滞の要因を産業の空洞化とアメリカへの従属化に求め、具体的な資料を駆使しながら詳細に分析を進めている。産業の空洞化として注目される産業として、電機産業と自動車産業を取り上げ、それら産業の海外展開による競争力の低下について、各社の経営戦略まで立ち入って分析し、現在、日本政府と大企業が力を入れている安全保障政策と一体となったインフラ輸出についても、その危険性を説得的に議論している。
この書では、アメリカ政府による日本に対するさまざまな要望が、日本経済の停滞に導いたことについて、具体的事実に基づいた議論が進められている。1994年から毎年取り交わされることになった「要望書」の内容に沿って実行されたさまざまな規制改革が、日本の経済社会システムをグローバル資本に都合のよいように改変してきたことは周知の事実だが、本書では、日本経済の米国流「機関投資家資本主義」への転換が、日本企業のかつての競争力をそぎ、ひいては日本経済の停滞を招いた要因となったことも説得的に論じられている。グローバル化と米国への従属が経済の停滞を招いた以上、それからの脱却は、日本のモノづくりの技術を生かしながら、自立的な産業構造の構築を目指すことによってなされるべきであろう、本書では、各国政府、外務省、民間有識者らの共同によって構想され、現実化しつつあった「東アジア共同体」について、「戦後の長きにわたり米国による戦争、介入、戦略に翻弄され、また社会主義国と資本主義国という分断で反目を強いられてきたアジアが、はじめて協力・団結して一致した協調体制を築こうとした画期的な動きでもあった」(本書644㌻)という積極的評価を下している。
本書を、国際アジア共同体学会第5回岡倉天心賞につよく推薦したい。(萩原伸次郎:学会顧問、横浜国立大学名誉教授)

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