学会活動報告「「ユーラシア新世紀をどう生き抜くか」2017.6.24(於立教大学)
  • 2017.8.21

学会活動報告


 「ユーラシア新世紀をどう生き抜くか」をテーマに2017年春季大会
特別講演はさみ4部構成で「RCEPと東アジア共同体への道」など討議

 国際アジア共同体学会(ISAC)は、「ユーラシア新世紀をどう生き抜くか」というテーマで2017年6月24日に「2017春季大会」を開催した。今回の大会は、日本華人教授会議、韓国人研究者フォーラム、東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会との共催のもと、立教大学池袋キャンパスで行い、数多くの人たちが参加した。

進藤榮一国際アジア共同体学会会長(アジア連合大学院機構理事長)は、今回の共通テーマに関するメッセージで「いま私たちに求められているのは、東アジアの経済社会文化的な相互依存と相互補完の関係をしっかりと深化させ、その制度化を進めること、端的には経済社会を軸にした協力と協働のメカニズムに組み替えて、伝統的な軍事安全保障から、持続可能な協働安全保障の仕組みを構築することが必要だ。欧州諸国が第2次世界大戦後、石炭と鉄鋼の共同生産管理体制の構築を経て『不戦共同体』という協働安全保障の原型をつくった歴史の教訓に学び、私たちは、新たにアジアで、環境や食料、エネルギーを軸にした共同管理運営体制を構築するための日本とアジアの『不戦共同体』のシナリオを描くことが重要だ。そして、時代の先にあるユーラシア新世紀を見据えて『脱亜入欧』から『連欧連亜』への道をめざすのが今大会のねらいだ」と述べている。

この問題意識を踏まえて、大会は、特別講演をはさみ4部構成で1日かけて、じっくりと議論を深めた。プログラムは、第1部が自由討論と特別パネル討論「トランプ後のアジア環境食料エネルギー政策」、第2部「RCEP(東アジア地域包括的経済協定)と東アジア共同体への道」、第3部「東アジア協働安全保障をどうつくるか」、そして第4部が招請講演という展開だった。

まず、第1部の自由討論部会では佐野光彦氏(神戸学院大学専任講師)を司会役に、黄祥雲氏(アジア連合大学院機構ジュニアフェロー)が「東シナ海をめぐる日中関係の歴史的考察」、続いて厳成男氏(立教大学経済学部准教授)が「中国経済の『新常態』と政府主導の経済構造改革」、また劉鵬氏(広東海洋大学経済学院講師)が「中国農村金融改革――中国農村信用社の金融改革から見る省聨合社の設立」について、それぞれ問題提起の形で報告した。

特別パネル討論では「トランプ後のアジア環境食料エネルギー政策」を議論

 このあと、特別パネル討論会に切り替え「トランプ後のアジア環境食料エネルギー政策」というテーマに関して議論を行った。冒頭、萩原伸次郎氏(横浜国立大学名誉教授)、そして松下和夫氏(京都大学名誉教授)が地球温暖化対策の国際協定であるパリ協定からの離脱を打ち出した米トランプ政権の問題などが国際的にどういった影響を与えるかなどに関して、幅広い観点から問題提起を行った。それを受けて明日香寿川氏(東北大教授)、後藤康浩氏(亜細亜大学教授)、金堅敏氏(富士通総研主席研究員)、唱新氏(福井県立大学教授)、作山功氏(明治大学准教授)、宮脇昇氏(立命館大学教授)がそれぞれコメントする形でテーマに沿った課題を浮き彫りにした。

午後のセッション冒頭に特別講演という形で、国際アジア共同体学会特別顧問で元早稲田大学総長、アジア平和貢献センター理事長の西原春夫氏に「東アジア国際法フォーラム(仮称)の発足と東アジア共同体形成へのアプローチ」に関して、講演していただいた。続いて、東アジアで日中韓3か国の公的連携にかかわる日中韓三国協力事務局次長の梅澤彰馬氏にも「日中韓三国協力と東アジア協働安全保障の構築へ」と題する講演をお願いした。この2つの特別講演の司会役は原田博夫専修大学教授が行った。

 

第2部は「RCEP(東アジア地域包括的経済協定)と東アジア共同体への道」というテーマで議論した。農林水産省時代にTPP(アジア太平洋経済連携協定)交渉にかかわった作山功氏(明治大学准教授)が「RCEP実現への道筋――TTP交渉妥結からの教訓」、続いて王大鵬氏(富山大学教授)が「RCEPの可能性と中国の対応」、そして吉野直行氏(アジア開発銀行研究所所長)が「メガFTA(自由貿易協定)と東アジア経済安全保障」の問題に関して、それぞれ問題提起を行った。これらの司会役は田代秀敏氏(シグマキャピタル・チーフエコノミスト)が行い、会場から数多くの質問を積極的に受け、議論交流した。

 

第3部は「東アジア協働安全保障をどうつくるか」がテーマ。林亮氏(創価大学教授)の司会のもと、平岩俊司氏(南山大学教授)が「朝鮮半島危機にどう対応するのか――多国間協力レジームの構築」、木村朗氏(鹿児島大学教授)が「沖縄問題と東アジア不戦共同体」、朱建榮氏(東洋学園大学教授)が「南シナ海問題の展開と東アジア共通安全保障」について、それぞれ問題提起を行った。

鳩山元首相、谷口元国連大使らが講演や討論で積極発言
最後の第4部は、大会の締めくくりを兼ねて、郭洋春氏(立教大学教授)の司会のもと、招請講演と特別討論のプログラム展開にした。

まず、鳩山友紀夫元首相に「ユーラシア新世紀への提言」という形で講演をお願いした。鳩山氏は、今大会直前の6月15~17日まで韓国済州島で開催のAIIB(アジアインフラ投資銀行)総会にAIIB国際諮問委員会顧問という立場で参加、またその1か月前の5月14~15日に開催の一帯一路フォーラムにも参加、それらの国際会議での体験を踏まえ、講演ではユーラシア新世紀の時代に積極的に関与すべきだ、と語った。

続いて、国際アジア共同体学会顧問代表で、元国連大使の谷口誠氏が「一帯一路構想への日中協力提言」という形で講演を行った。谷口氏は講演の中で「日本は、直ちにAIIBに加盟し日本のハイテク技術を駆使してアジアが必要としているインフラ投資に参加すべきであり、機が熟せば中国と協力して大型のインフラ経済投資を促進すべきだ」と述べた。

このあと谷口氏、福井県立大学名誉教授で中日科学技術文化交流センター長の凌星光氏、そして、コメンテーターとして中日新聞・東京新聞論説委員の加藤直人氏の3氏による「ユーラシア新世紀と一帯一路問題をめぐるパネル討論」を行った。

 

 

進藤学会会長が「連欧連亜への時代に向けアジア連携への道を確信」と大会総括

最後に、進藤榮一国際アジア共同体学会会長が、大会総括という形であいさつに立ち、次のように締めくくった。

「ユーラシア新世紀をどう生き抜くか、という大会の共通テーマに沿って議論が深めることができた。パクス・アメリカーナが終焉し、パクス・アシアーナが台頭し続けている。まさに英エコノミスト誌元編集長のビル・エモット氏が最近、自身の著作で指摘した「西洋(米欧日)の終わり」状況にある。今、私たちに求められているのは、「連欧連亜」であることが今回の全体討議を通じて改めて確認できた。その道が今、AIIBと『一帯一路』によって用意され、そしてアジア連携への動きが確実に出てきたことを確信した」

以上
(文責・理事牧野義司)

 

 

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