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「日中国交正常化45周年記念シンポジウム」2017.11.30(於日本記者クラブ)

ISAC20171130

今回の大会プログラムは、第1部:一帯一路構想と日中産業技術協力をテーマに基調講演、第2部:一帯一路構想からアジア環境エネルギー協力問題でパネルディスカッション、第3部は「日中国交正常化45周年を超えて」と題して福田康夫元首相、程永華中国特命全権大使ら関係者の招請記念講演。

 

第1部「アジアスーパーグリッド構想」「シルクロードが開く日中露新関係」など基調講演について

岸輝雄氏(東京大学名誉教授、外務大臣科学技術顧問)の基調あいさつ、末吉竹二郎氏(自然エネルギー財団代表理事)、李勇慧氏(中国社会科学院ロシア東欧中央アジア研究所副主任)の基調講演

岸氏は基調あいさつで、日中間の科学技術関係の強化の必要性を述べるとともに、中国が科学技術の面でこれまでの先進国キャッチアップから今やオリジナル研究にシフト、とくに中国にとって大きな課題の公害や大気汚染などの環境問題に関して積極対応が見られ問題解決に向けての道が少しずつ開かれつつある、と述べた。

このあと末吉氏が「アジアスーパーグリッド構想のめざすもの」と題し、自然エネルギー財団が進めるアジア各地の風力や太陽光などを相互に活用し合う国際送電網「アジアスーパーグリッド」構想に関して「決して夢物語でない。今や十分に現実味を帯びるほど、具体化しつつある。海外の電力網などとつながっていないのは、アジアで日本と韓国だけだ。国や地域を越えた国際連携が必要だ」と述べた。

続いて李氏は「シルクロードが開く日中露新関係」というテーマで講演、この中で中国とロシアの間にはシルクロードをめぐる一帯一路プロジェクトがあり、それを含めてユーラシア大陸には壮大なるインフラプロジェクトが期待される。それらをきっかけに、日本を交えて日中露3か国で関係強化を図ることが重要だ、と述べた。

 

第2部「一帯一路構想からアジア環境エネルギー協力問題」で専門家が問題提起含め研究報告

河合正弘氏(東京大学大学院特任教授、環日本海研究所代表理事)、田代秀敏氏(シグマキャピタルチーフエコノミスト)、周璋生氏(立命館大学教授)、小野塚恭彦氏(世界省エネルギー等ビジネス推進協議会官民連携WS主査)、李志東氏(長岡技術科学大学教授)がそれぞれ問題提起を含めた研究報告を発表、それを踏まえたパネルディスカッション。

河合氏は「東アジア地域協力から一帯一路へ」というテーマを掲げ、中国が経済のリバランス、端的には投資依存型から個人消費を軸に内需拡大型、重厚長大型から消費サービス型への変更を余儀なくされる中で、中国は経済力や金融力を手段にして対外的に経済拡大を図ろうとし、そのために海と陸の2つの現代版シルクロードの沿線国とリンク、かつ中国国内のプロジェクトともリンクさせて一帯一路という名前で沿線国と連携したスケールの大きいインフラプロジェクトだ、と位置付けた。ただ、今後の課題として、中国がプロジェクトを具体化するにあたって、法制度の異なる国々との協調をどうするのか、また沿線国と二国間でプロジェクト展開しているが、国際的な広がりがあるため、プロジェクト自体に対する国際的な評価を行う枠組みづくりが必要になるだろう、と述べた。

田代氏は、「一帯一路がひらく日中関係再構築」をテーマで、中国が今後、IT企業のアリババ集団のネット通販を使ってASEAN市場に攻勢をかけるため、ASEANの経済購買力はそのネット通販によって中国に吸い取られるだろうということ、また中国は米中間の政治の問題とは別に、米国と民間ベースで連携を進める可能性が十分にある、さらに一帯一路プロジェクトを通じて中国の民間企業2000社がカザフスタンに市場原理にもとづいて進出していることーーなどで、中国が対外的に経済力の拡大に踏み出していることを明らかにした。

周氏は「一帯一路における東アジアのエネルギー協力」というテーマで、北東アジアで低炭素共同体づくり、都市間低炭素共同体づくりが今後の重要課題になる、と述べた。とくに日本の役割について「日本の石炭火力プラントの輸出がCO2の排出の原因をつくると批判を浴びているが、これらプラントのCO2排出削減能力は大きく、中国に輸出すれば、効果が期待できる」と述べ、省エネ技術を生かしたプラント輸出に力を注ぐべきだ、と述べた。また、一帯一路プロジェクトにからめて沿線国間でエネルギー環境協力する必要があること、とくにエネルギー環境面で課題を多く抱えるモンゴル、北朝鮮、ロシアを巻き込むのは難しいかもしれないが、彼らを巻き込んで実行に移すべきであること、それこそがベストミックスとなると述べた。

小野塚氏は「日中韓省エネ推進の現場から」というテーマで、「この3か国が一緒に省エネをハイブリッドの形で進めることが大事だ」と最初に述べ、一帯一路問題に関しては「中国からロシアを抜けて欧州に向かう鉄道1つとっても、中国国内はレールが狭軌、ロシア国内は広軌で、協調ができていない。エネルギーの効率性に欠けるため、関係国間で早く調整すべきだ」と述べた。

李氏は、「新エネ自動車パラダイムシフトとアジアの低炭素社会の道」というテーマで、電気自動車を含めて新エネ自動車へパラダイムシフトすれば、間違いなくアジアの低炭素社会化が進むのは間違いないが、値段が高く、どうやって実現するかが大きな問題だ、という。電気自動車に関しては、太陽光や風力などの再生エネルギーをうまく活用できるかどうかがカギだ、とも述べた。

 

第3部:福田元首相、程駐日中国大使、宮本元駐中国大使、西原元早稲田大総長が講演

福田康夫元首相、程栄華駐日中国特命全権大使、宮本雄二元駐中国日本大使、西原春夫元早稲田大学総長の4氏が招請記念講演

福田元首相の講演内容は、本グローバルレヴュー6号P2〜4を参照。

程駐日大使は「中国と日本は重要な隣国同士だ。引っ越しはできない。両国間で安定した健全な関係がつくれるように互いで努力することだ」「平和と友好、協力を掲げて日中両国が国交正常化45周年を迎えた。これまでは両国間に波風がありすぎて山あり、谷あり、ある時は止まらないジェットコースターになるときもあったが、いまはやっと止まった、と言っていい」「友好とは、互いに脅威にならないこと、互いに友好協力のパートナーになることだ」と述べた。

また程大使は「中国には、これからエコ文明が必要になる。クリーンで低炭素の社会を築くことだ。日本にはそれらの経験や技術があり、ぜひ中国のエコ文明実現に向けて協力を仰ぎたい」「一帯一路のプロジェクトに関しても、日中が実務面で協力しあうことが重要だ。ユーラシア大陸の発展に向けて、日中がどう協力しあうか、周辺国、沿線国も期待している点だ」と述べた。

宮本元駐中国日本大使は、日中国交正常化45周年を迎えるまでのこれまでの両国間の関係を振り返ったあと「問題はこれからどうするかだ。習近平中国国家主席は、新しい対外・国際関係の在り方、さらに人類運命共同体といった表現で、今後への中国の取り組み姿勢を語っている。それ自体は評価できる。しかし、一帯一路の問題とも関係するが、この問題も原理原則がないとだめだ。一帯一路の理念は何か。また平和という問題に関しても、そういうルールをつくれば平和になるのか、具体的どう実現するのか、口先の平和でなくて、どうすれば平和を実現できるのか、そのための守るべきルールは何かなど、ある面でアーキテクチャーが必要だ」と述べた。

さらに「一帯一路のプロジェクトに関して、日本は、中国に対し国際的な公共財するしっかりとしたアイディアを出すべきだ、と提案していくことが重要だ」とも述べた。

西原氏は「私は、東アジア国際法秩序の構築に向けての取り組みをさらに進めようと考えている。この取り組みのためのプロジェクトを3年前にスタートさせたが、いま一種の紛争地域になりつつある東シナ海、南シナ海に国際法秩序がワークするようにすることはますます重要になってきている。中国の学者も西原イズムに聞く耳を持ち、次第に国際法秩序が定着するような仕組みづくりをどうすればつくれるかなどに関して、やる気を見せ始めている。こういった枠組みづくりの提案をしたのは日本だが、日本としては東アジアを仕切る指導者になる必要はない。むしろ、さりげない世話役として、新たな秩序形成のお役にたてばいい、と思っている」と述べた。

最後に進藤会長は「東アジアは一つ。もはや総論、抽象論の時代ではない。新たなアーキテクチャーの時代だと考える。中国が国際公共財の観点で取り組もうとしている一帯一路問題に関して、私たちは新たに一帯一路日本研究センターをつくる予定だ。パックス・アメリカーナが終焉し新たにアジア力の生気が台頭する中で登場した一帯一路問題に関して、今回、私たちが議論したアジア環境エネルギー協力の構築につなげる共生のリアリズムによって、とらえ返すことが重要だ」と締めくくった。以上
(文責・理事牧野義司、その後事務局で要約しました)

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