論稿「東論西遊」

[異なる視点論点⑨] 香港動乱:いくつかの新しい視点 2019.10.10 <朱建榮>

異なる視点論点⑨(2019年10月10日)朱建榮(東洋学園大学教授)

香港動乱:いくつかの新しい視点

 参考消息、またご無沙汰しました。最近まで米中関係の動向に集中し、香港問題にはそれほど注意を払っていなかった。香港で進行中の事態に関する外部の報道に違和感を多少覚えながらもそのまま見守っていた。
9月中旬、香港に関する研究会合に参加してから、香港の複数の友人、現地在住のかつてのクラスメートなどと意見交換し、各方面の情報を集めた。とりわけ、10月に入って、ある日本人が書いた香港ルポが友人から紹介され、その中の一枚の写真からショックを受け、なんとか香港問題を「洗い直そう」と考えた。この号はまず、「香港の真実」に関してマスコミ大手がほとんど伝えていない視点と論点を紹介し、後半は北京サイドの読みと対応の変化を追跡し、その行方を展望してみたい。

一「香港警察は暴力的」?「香港に自由がない」?
香港の国際イメージが急落している。ネットで10月9日付で伝えられた以下のギャロップ世論調査(主に欧米人が対象)によると、全世界の「最も希望のない地域」のランキングでは香港はシリアよりも低いワースト5位にランクされ、「希望指数」は2018年の「+10」から今年の「-25」に、天国から地獄に落ちた。
① 獨家191009外国勢力持續消費香港,為暴徒撐腰不計後果
https://mp.weixin.qq.com/s/aOl3JW91RtJDElqZUn_jAA

しかしちょっと待て。香港は欧米のシンクタンクが行ってきた「自由指数」の調査ではずっと世界の最前列に位置しているのではなかったのか。例えば、最も権威的な調査の一つである、カナダのフラスター研究所(Fraser Institute)が毎年公表している「The Human Freedom Index」は、香港について、2016年までは長年の世界1位、17年は世界2位、18年(年末の発布)は世界3位と採点している。以下は2018年版報告書の全文。
② 「The Human Freedom Index 2018, A Global Measurement of Personal, Civil, and Economic Freedom」
https://www.fraserinstitute.org/sites/default/files/human-freedom-index-2018.pdf

台湾の人気サイトの解説は以下の通り。
③ The News Lens 關鍵評論網181212人類自由指數:香港曾高踞榜首,今再跌一位全球第三
https://www.thenewslens.com/article/109960
この解説記事によれば、この「人類自由指数」は個人の自由、公民の自由、経済の自由、警察と司法の公正・廉潔度など79項目の指標から総合して割り出されたもので、162の国と地域が調査対象。自由度の最も高いベスト10は、ニュージーランド、スイス、香港、オーストラリア、カナダ、オランダ、デンマーク、アイルランド、イギリス、台湾、ノルウェーとフィンランドである。ちなみに、米国は17位、日本は31位、インドは110位、中国は135位となっている。

香港の新聞では、この自由指数をもとに、「民主派」が米国総領事館の前でデモを行い、「米国が香港の自由を支持せよ」と求めたことに関して、ある外人の次の書き込みを引用して揶揄した。「香港人は地球の自由指数3位のところに暮らしながら、どうして17位の国(米国)に自由を求めるのか」。
④ 頭條日報190912巴士的點評——全球自由指數排第三的香港,要向排118的烏克蘭學習?
https://hd.stheadline.com/news/columns/417/20190912/795500/%E5%B0%88%E6%AC%84-%E5%B7%B4%E5%A3%AB%E7%9A%84%E9%BB%9E%E8%A9%95-%E5%85%A8%E7%90%83%E8%87%AA%E7%94%B1%E6%8C%87%E6%95%B8%E6%8E%92%E7%AC%AC%E4%B8%89%E7%9A%84%E9%A6%99%E6%B8%AF-%E8%A6%81%E5%90%91%E6%8E%92118%E7%9A%84%E7%83%8F%E5%85%8B%E8%98%AD%E5%AD%B8%E7%BF%92
同記事は更に次のエピソードを紹介する。活動家たちは2014年のウクライナの街頭デモが「革命」になり、旧政権を倒したことを描写したドキュメンタリー映画『凜冬烈火:烏克蘭為自由而戰』を持ち込んで香港の各地域で上映し、「ウクライナに見習って闘って自由を勝ち取ろう」と呼びかけた。これをめぐってライターは辛辣な皮肉を加えた。
既然有人到處播片叫香港學習烏克蘭,我便看看烏克蘭在全球自由指數榜排名,一看嚇一跳,原來烏克蘭排在第一百一十八位!還低過非洲的贊比亞、亞洲的馬來西亞和老撾。烏克蘭這個自由度低得嚇人的国家,竟然是香港人要學習爭取自由的對象?香港如果成功學習烏克蘭,在世界自由指數排名,會否由第三位直插至第一百一十八位?
ウクライナの自由度ランキングはザンビア、ラオスよりも低い世界118位だ。世界3位の香港がウクライナに見習い、やはり世界118位のレベルになり下がったほうがいいのか、という。

ちなみに、今年9月、同じFraser研究所が発表したもう一つの指数、「世界経済自由度2019年度報告」では、動乱に憂慮を示しながらも香港がニュージーランドと並んで経済自由度世界1位にランクされた。
⑤ 明報新聞網190912港續膺最自由經濟體 菲沙研究所:内地干預及暴力鎮壓示威威脅法治
https://news.mingpao.com/ins/%E6%B8%AF%E8%81%9E/article/20190912/s00001/1568300880830/%E6%B8%AF%E7%BA%8C%E8%86%BA%E6%9C%80%E8%87%AA%E7%94%B1%E7%B6%93%E6%BF%9F%E9%AB%94-%E8%8F%B2%E6%B2%99%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80-%E5%85%A7%E5%9C%B0%E5%B9%B2%E9%A0%90%E5%8F%8A%E6%9A%B4%E5%8A%9B%E9%8E%AE%E5%A3%93%E7%A4%BA%E5%A8%81%E5%A8%81%E8%84%85%E6%B3%95%E6%B2%BB

にもかかわらず、最近の香港は世界で「最も悲惨な地域」の一つだと海外のメディアで描かれるようになった。そのギャップに、真実からかけ離れた報道、ないし世論操作による部分がなかったか。各国の民衆は自ら香港を知るツールがない。結局、マスコミによって作られた「香港に自由がない、危機一髪!」のイメージを受け入れ、それが逆に「香港が悲惨」とのアンケート調査にフィードバックされ、仮想現実が独り歩きするようになった、との側面はなかったか。

日本のマスコミ大手も大体、「香港警察は暴力を過度に使用」「香港民衆は自由獲得のために闘っている」との論調で伝えている。その伝え方は、「香港警察の暴力は北京の独裁を映したもの」「香港特別区政府は中国の言いなり」といった意味を読み手・視聴者に刷り込ませてもいる。
正直に言って、自分も9月末まで、そのような受け止め方を何となく受け入れていた。安田峰俊というノンフィクション作家が書いた現地ルポを友人から薦められて10月に入ってから読むまでは。
この作者の経歴  から見て、別に親中派でも何でもない。ややオタクの部分があるのかもしれない(本人に失礼!)。彼の書いた香港ルポ第2号に次のような一枚の写真が載っていた(次のページ参照)。
原文の写真説明はこうなっている。
実は香港警察のデモ隊鎮圧指揮を執っているのは、植民地時代から残っているイギリス人幹部である。現在の香港デモの最前線では、イギリス人に指揮される警官隊と、アメリカや中国で訓練を受けた(可能性がある)サバゲー愛好者たちが戦っている。9月7日、旺角で撮影。

香港警察の現場指揮官がイギリス人。それも含めて「中国の手先」になっているのか。「中国の私服武装警察が香港警察(の了解を得て)に交じって衝突現場で破壊活動をしている」との説も日本でまことしやかに流れている。そうだとすれば、外人警察まで騙されているか、もしくは彼らも北京に「買収」されて黙認しているか、という前提が必要。そうでなければ、香港警察が前述の「自由指数」の調査に示されたとおり、実は彼らこそ香港の法治を守る最前線に立っていることになる。

自分はある討論番組で、報道のダブルスタンダードを問題にした。フランスの黄色ベスト抗議運動の中で、Wikipediaによると、19年2月までの5か月間、デモ参加者と警察の衝突でフランス国内だけで11人死亡、負傷者は民間人2060人、警察1325人、逮捕者8700人なのに、どうして「警察が暴力を使いすぎ」と非難されないのか。まして米国の警察は世界で最も発砲が多く、多くは手ぶらの民間人に対してだ。これも暴力だと言われない。
⑥ 黄背心運動 維基百科 自由的百科全書
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%83%E8%83%8C%E5%BF%83%E9%81%8B%E5%8B%95

ネットで香港の司法と警察に占める「外人」の存在を調べた。
⑦ 知乎190718香港警察隊伍中的外籍雇員現狀如何?
https://www.zhihu.com/question/48843261
これによれば、今日でも100人ぐらいの「外人部隊」が香港警察に含まれており、その多くは香港各地域の責任者・現地指揮官を担当している。同記事は彼らの活躍を示す写真を多く掲載しており、ぜひ覗いてみてください。
2014年の雨傘運動で抗議者に殴打され頭に血を流す外人警官の写真も入っている。これで彼らは警察内部で一段と信頼され、中心になったとのこと。

記事の一番後ろに、各地域のトップを担当する外人(イギリス人)警官の写真、名前、担当職務が紹介されている。
記事でもう一つ初めて知ったのは、英語ができる、多文化社会への対応の必要などの理由で、パキスタン、ネパール、インド国籍の警官も新たに募集されていること。

一方、香港の司法は今でもイギリス人裁判官が「牛耳っている」と言える。2年前の記事だが、「終審法院」(香港の最高裁判所)の判事は全員、イギリス国籍か二重国籍だと、そのリストが掲載されている(右)。
⑧ 立場新聞170224大陸網絡廣傳終院法官国籍稱無一純中国人
https://www.thestandnews.com/politics/%E5%A4%A7%E9%99%B8%E7%B6%B2%E7%B5%A1%E5%BB%A3%E5%82%B3%E7%B5%82%E9%99%A2%E6%B3%95%E5%AE%98%E5%9C%8B%E7%B1%8D%E7%A8%B1%E7%84%A1%E4%B8%80%E7%B4%94%E4%B8%AD%E5%9C%8B%E4%BA%BA-%E6%89%B9-%E5%A4%96%E7%B1%8D%E6%B3%95%E5%AE%98%E7%8E%A9%E6%AD%BB%E9%A6%99%E6%B8%AF/

二 香港デモ隊の“醜い真実”
話が戻るが、安田氏は9月5日から「現地ルポ」#1を書き始めており、10月10日発売の『文芸春秋』最新号にその内容の大半が一つの記事になって掲載された。ここでは彼のルポを主線に他の資料も併せて紹介する。

① 文春オンライン190905香港ルポ① 逃亡犯条例撤回 「こいつら暴徒だわ」香港デモ隊の“醜い真実”をあえて書く
https://bunshun.jp/articles/-/13886?page=1
安田ルポ#1は次のように書きだす。
私は8月26日から現地に滞在している。騒動が一定の節目を迎えたことで、現地で見聞した不都合な事実――。すなわちデモ隊にとって都合の悪い情報についても、あえて伝えるべきだと考えて今回の記事を書くことにした。以下で詳しく書くように、デモ参加者の一部はかなり暴力的な行動にはしっており、さらに従来我々に伝えられてきたデモ報道は(欧米メディアの情報も含めて)あまり客観的ではない。
続いて、中国メディアも欧米メディアも鵜呑みにしてはならないと体験談を紹介する。
破壊、投石、放火、占拠
(中略)「香港ではああいう表現もありなのです」とデモ隊を擁護する人もいる。そうなのかもしれない。だが、仮に日本で同じことをやる集団がいれば、たとえ彼らがどんなに美しい正義を掲げていようと、私は決して支持する気にはならないと思う。
(中略)欧米メディアは旧英国領の国際都市・香港に好意的で、近年世界的に警戒論が高まる独裁国家・中国に批判的だ。ゆえに香港の「暴徒」たちがいくら乱暴狼藉を重ねても、カメラのなかの香港デモは「純粋な若者の民主化運動」としての顔が強調される。自由と正義のために戦う少年少女の、心を打つ姿ばかりが真実として配信されていくのだ。
安田氏はこの報道合戦を「21世紀のプロパガンダ・ウォー」と呼ぶ。ぴったりした表現だ。更に香港デモ隊が「自身がかなり積極的にプロパガンダを駆使して情報戦を戦い、欧米と中国の双方を翻弄している感すらある」と指摘するところに深みがある。
いまや香港のデモ隊と警官隊は、西側自由主義陣営と専制中国による21世紀型の代理戦争の兵士に変わっている。もっとも、香港のデモ隊は欧米勢力の単なる駒には甘んじていない。むしろ、彼ら自身がかなり積極的にプロパガンダを駆使して情報戦を戦い、欧米と中国の双方を翻弄している感すらある。
ここでデモ隊が積極的におこなっているのは、西側のメディアに「報道映え」する写真をできるだけ撮らせること。そして、自陣営に不利な印象を与える「暴徒」的な数多くの悪行の実態を、デマの上書きを繰り返すことで真偽不明の情報に変えてしまう情報工作だ。
デモ隊は自発的に宣伝部隊や外国語対応部隊を作り、SNSを通じて自陣営に有利な情報を「ガイジン」に吹き込み続け、マズい情報は隠蔽する。たとえ日本語や英語の投稿であっても、不利な意見には外国語部隊が火消しを仕掛ける。
募金を集め、世界中の新聞にクールなデザインの意見広告を掲載させることも何度もおこなっている。他に私自身が現地で見聞したところでは、デモ隊の日本語話者が日本のジャーナリストやテレビクルーの通訳者に入り込み、自分たちに有利な意見や情勢分析を伝えていく事例も3件観察された。

もう一人の現地取材の日本人元記者も、9月の段階に入ると、市民がデモの若者を見放していることを伝えている。
② 東洋経済Online190913香港デモの若者を市民は見放しつつある
https://toyokeizai.net/articles/-/302613

安田ルポの第2弾は以下の通り。
③ 文春オンライン190913香港ルポ② 香港デモは「オタク戦争」? 最前線のガチ勢“覆面部隊”の意外な正体とは
https://bunshun.jp/articles/-/14108?from=groupmessage
過度の引用は著作権侵害の恐れがあるし、スペースの問題もあり、その中の小見出しだけ紹介しておく。
「デモ先占を支える『謎の覆面コマンド―集団』」
「火炎瓶から催涙弾の消し方まで――なぜ熟知している?」
「最精鋭部隊の正体」など。
このルポの中に、本文の冒頭に使ったイギリス人警察が陣頭指揮をとっている写真が掲載された。
ちなみに、このルポ#2では、デモ隊が米国政府などの操り人形だといった中国側が一時期主張した「陰謀論」も否定し、「オタク・ウォー」との定義を与えている。

ルポ第3弾は香港の親中派議員に対するインタビューの内容で、彼らの本音、複雑な心理及びその情勢に対する見立を知る上で参考になる。
④ 文春オンライン190923香港ルポ③ 体制側が語る香港デモ「政府は完全に判断を誤った」「警察はもう限界だ」――大物議員に聞いた
https://bunshun.jp/articles/-/14247?page=1&from=groupmessage

⑤ 文春オンライン191005香港ルポ④ 警察発砲&マスク禁止法―― 混迷の香港デモを指揮する“謎の組織X”が存在する?
https://bunshun.jp/articles/-/14543?page=1&from=groupmessage
このルポ第4弾は、高校生の左胸に命中した警察の発砲があった後に出されたもので、武闘派側に対する観察としては特に深みがある。
香港デモは「組織がない」とされていることに関しても作者は細かい調査を踏まえて、「実は疑ってかかる余地がある」と提起し、その組織・分業図まで作成して掲示した。
偵察部隊幹部との接触に成功したインタビュー記録も収録された(日本人の取材者だから打ち明けたのだろう)。それによると、「偵察任務の司令部が存在する」、LINEやWhatsAppではなくTelegram(ロシア製のアプリ、かのイスラム国も)を使って連絡を取り合うことで警察対策を取っている、という。
そして香港デモが「無大台」(組織がない)であることはデモ関係者が対外的に必ず口にする言葉だが、ルポは「統括組織Xの存在を疑わせる要素は少なくない」と提起し、次のように指摘した。
主張の統一、大規模なデモや集会の全体戦略や日程・場所の策定、海外の反中国勢力や香港内のシンパの富豪などから大量に流れ込んでいるとみられる活動資金の管理といった高度な意思決定は、統括組織Xの内部でかなり慎重に決められているのではないかと思える。

カナダ国籍を取得した中国系のToby Guuの体験談も紹介したい。
⑥ 香港新聞網190929因為揭穿香港暴徒的真面目,加拿大“假記者”被恐嚇
http://www.hkcna.hk/content/2019/0929/786830.shtml
彼はマスコミで宣伝された「香港警察の暴力」に義憤を感じ、それを撮影してYouTubeに載せて世界に拡散しようと思い、記者を扮装し、香港の衝突現場に乗り入れた。ところが撮影するうちに、おかしいと感じ始めた。
我沒有看到警察有那麽的暴力,事實上,這些抗議者反而更加暴力。香港警方的確有一些克制。
「警察はそんなに暴力的ではなく、ある程度抑制的だ。それに比べ、抗議者たちはもっと暴力的だ」「自分も怖くなった」とのコメントをつけて、彼は自分が撮影した以下の映像をYouTubeに載せた。関心ある方はご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=W6Jgp7-tXfc
https://www.youtube.com/watch?v=Bk4P1oeItOA

現場に飛び込んで先入観にとらわれずに書いた香港記事はほかにも多数あって一々紹介しない。それにしても、真の日本人ジャーナリストの在り方を示した安田氏のルポは重みがあり、説得力がある。あるベテラン記者もそのルポを読んでこう感想を送ってくれた(無断で引用、ごめんなさい)。
安田峰俊による幾つかのルポ、特に「香港デモを指揮する“謎の組織X」は秀逸でした。「”香港のデモ隊と警官隊は、西側自由主義陣営と専制中国による21世紀型の代理戦争の兵士に変わっている」という指摘も一顧に値する分析だと思います。
足で稼ぐジャーナリズムの基本動作に基づく記事を読ませられると、頭の中で「空想」をめぐらす自分のリポートがいかに薄っぺらか、知らされる思いです。

三 中国側の対応に大幅な揺れ
以下は自分の専門でもある中国の内政と外交という角度から、この数か月間の中国側の動向を検証してみたい。
6月の「移送条例」がここまで大きな反発を呼び、大規模な抗議デモが行われたことは香港行政長官のみならず、北京の予想を超えたものであろう。香港の自由が徐々に失ってていくのではないか。「内地」の介入・干渉がじわじわと強まるのではないか。「一国」の中の「二制度」が保たれるか。そのような懸念、不満がマグマのように存在し、「移送条例」の強硬採択をきっかけに噴出したことは間違いない。
一方、単純にこの角度で読み切れない側面もある。まず「香港人」の構成から見る。
香港の750万人の人口のうち、社会主義中国に根っこから反対もしくは距離を置く人間が大勢あるという複雑な実態も知る必要がある。例えば、
A かつての英国植民地時代のエリート層、
B 台湾系の勢力
C 中国大陸からかつて文化大革命などの政治迫害から逃れてきた人たち、
D 現在の中国の政治体制に批判的な勢力、
E 数十万人のかつてのベトナム難民とその子孫、など、
彼らには、根っこからの不信感、対立的感情があるのは事実だ。
一部は重なるが、別の統計方法からもそれが推し量ることができる。
F 香港住民には少なくとも200万人以上の外国籍もしくは二重国籍がいる。日本人研究者もかつて「(香港人の)半分がBNO(英国国民(海外)パスポート)又はBDTC(英国属土公民パスポート)保持者」と指摘し、初代香港特別行政区長官の董建華氏は、返還直前まで米国パスポートを所有していた、という。
G 香港中文大学の2017年の調査によると、1割以上の住民が陰に陽に香港独立を支持している。したがって彼らに「一国二制度」の枠の中でどんなに懐柔策をとっても効かない。
その上で、数年前の「雨傘運動」の挫折で中国や香港行政区政府に不満を募らせた若者、就職・生活に絶望感を持つ若者と貧困層なども抗議デモに合流している。
だから、「一国二制度」への不満がすべて、という抗議運動の背景を単純化するより、もっと視野を広げて観察する必要がある。例えば、マカオも「一国二制度」だが、香港のような反発も世論の分裂も起きていない。
① 澳門日報電子版180904近八成中學生:我是中国人
http://www.macaodaily.com/html/2018-09/04/content_1292548.htm
マカオの若者はこの10年余り、「自分は中国人」との意識を持つものが8割前後で推移し、下がっていないとの調査結果が出ている。

② 香港多維客180617為什麽澳門国家認同好於香港
http://blog.dwnews.com/post-1032771.html
かつての歴史が違ったことや、かつての宗主国の影響力の相違、返還後の経済と生活状況など様々な要素が「一国二制度」に対する認知を違わせている、と分析されている。

③ 香港大學亞洲研究中心2008身份認同:臺、港、澳的比較
https://www.modernchinastudies.org/cn/issues/past-issues/100-mcs-2008-issue-2/1052-2012-01-05-15-35-31.html
少し古いが、台湾、香港、マカオという三者のアイデンティティの比較を行った論文もある。
香港問題の難しさ、特殊性を説明するために以上の資料を引用した。

中国にとって返還当時の香港のGDPが大陸の2割近く相当、との重みがあり、香港を金融センター、貿易センターとして大事にする中、香港の金持ちだけを相手にし、一般民衆の気持ちや困難への直視をおろそかにした。今や香港のGDPは大陸の2%強しかない。今度は逆に香港に対する姿勢が傲慢になったり、香港社会の構造的問題への対応を怠ったりした。現在の中国に関して少なくとも多くの香港の若者が親近感を持っていないのも事実だ。中国自身が今回の香港騒動で総括すべきものが多々ある。

ところで、今年6月以降の香港の混乱に対して北京側の認識にどのような変化がたどったか。この間、大幅な揺れが生じ、内部で激しい論争が起こり、これまでの香港政策の制定者ラインが影響力を急速に低下させている、という変化の形跡が見受けられる。
以下は海外の記事を中心に、中国側の動向を追ってみたい。

④ BBC News 中文190822香港抗議持續 盤點中国采取的五大應對辦法
https://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-49422502
香港示威抗議之初,中国媒體對香港百萬人上街遊行的消息可謂“鴉雀無聲”。
「移送条例」が出て、香港で大規模な反対デモが発生した6月の段階では、中国側は戸惑ったのか、「様子見」を決めていたのか、政府系メディアはデモに関する記事がほぼ皆無だった。
特首林鄭月娥7月9日表態,條例“壽終正寢”。
抗議者隨後提出了“五大訴求”,即正式撤回條例、撤銷以暴動定性示威、撤銷對被捕抗議者的起訴、成立獨立調查委員會徹查香港警方處理抗議活動的方式以及落實普選。
行政長官キャリー・ラムが7月9日、「移送条例」の事実上の廃案を発表したが、反対側は今度、5項目要求を打ち出し、街頭デモが過激化し、中央政府の駐在施設や香港立法会を攻撃したり、そのリーダーが欧米を訪れたり、ポンペオ国務長官の接見を受けたりした。これで香港政策を主導してきた国務院香港マカオ弁公室のラインは事の重大さを感じ、「全面的反撃」に出て、「外部勢力が操っている」「暴徒化」「テロに近い」と批判や圧力を強めた。
7月29日中国国務院港澳辦公室首次舉行記者招待會,公開就香港抗議示威表態。張曉明主任:香港正面臨回歸以來最嚴峻的局面,當前最急迫和壓倒壹切的任務,就是止暴制亂,恢復秩序,共同守護我們的家園,阻止香港滑向沈淪的深淵。
中国駐港解放軍在8月1日建軍節之前發布《不忘初心守護香江》的宣傳短片,内容出現防暴演練的畫面。一時間,駐港部隊可能介入香港事務的擔憂四起。
中国武警在與香港僅一河之隔的深圳練武演習。8月19日黨媒《人民日報》公開發表深圳武警演習的視頻,被外界視為武力鎮壓仍然可能是中国處理香港抗議的一個選項。
8月7日人民日報刊登 “宣戰”檄文《這場生死戰關乎香港前途命運,退無可退無需再退!》:“非常時期,必用重典。誰破壞香港的現在,誰就須受到嚴懲;誰敢透支香港的未來,就拿誰是問!香港再這樣亂下去,政府部門不會允許,民眾也決不會答應。”
7月29日の国務院香港マカオ弁公室主任の強い批判の発言以降、人民日報の8月7日付批判論文、深圳での武装警察の演習場面の公表などで、香港の過激派グループ、更に暗に香港政府、香港経済界に圧力を強めた。

転換点は外部が気付かないうちに、8月後半に訪れた。
8月18日、香港で再度、大規模な抗議デモが行われた。北京指導者の多くがそのテレビ生中継を見て、習近平主席が初めて指示を出した、と報じられた。
⑤ 萬維讀者網190823 818大游行後 習對香港局勢最新内部表態披露
http://news.creaders.net/china/2019/08/22/2126967.html
習近平及中南海高層8月18日都看到當天港人集會的場面,次日8月19日早上,北京緊急向在港各機構部門負責人傳達習近平最新指示,習稱:“誰惹的麻煩誰自己解決,自己去善後處理,不要再給中央添壓力。”
该名红二代还披露,此前,所谓中央不同部门在港搞的“传达会”,都是港澳办、中联办那边人搞的,与习近平不同调。另有传媒称习近平讲话“要按成都模式”处理香港问题,即要重判示威者,及北戴河会议达成共识等,都是不实之言。
该名红二代说,“北戴河会议”实际不存在了,目前就剩下中央高层老干部和军方老人度假,政治上已发挥不了影响力,习近平也不听老人的了。
习近平的讲话还包括,不会让军队入香港,也不希望看到香港反送中事件波及到中国大陆,及出现香港民众针对北京中央等情况。该名红二代当日也听了传达,他说,19日当日传达完后,香港中联办几位负责人面色都很难看。
该红二代称,今次香港问题全面爆发,是港澳办、中联办以及特首林郑月娥在香港惹的乱局,他们要负主要责任。
他称,习近平不信任港澳办、中联办,认为他们在继续执行江泽民系统核心人物曾庆红、前港澳办主任廖晖那一套政策,港澳办一直给北京传递假消息,习近平政令出不了中南海。但贸易战开打以来,习近平焦头烂额顾不上香港。同时民众怒火烧向中共。
要旨:
1、8月19日午前、香港関係部門責任者が招集され、「(最近の)トラブルを引き起こした人に自ら片付けてもらおう。自分で善後処理をし、これ以上中央にプレッシャーを加えるな」という習主席の指示が伝えられた。
2、習氏の指示に、「軍隊を香港に派遣してはならない」「香港の反移送条例事件が中国大陸に波及し、香港住民の矛先が北京に向けられるような事態を避けよ」といった内容も含まれた。
3、「北戴河会議で協議と合意」「香港のデモ参加者を厳罰せよ」といった伝聞は憶測に過ぎず、長老の言論を習氏はもはや気にしなくなっている。
4、香港マカオ弁公室の幹部たちは批判された。彼らがとってきた方針は間違っており、北京に「偽情報」を伝えていたとして習主席の信頼を失った。
5、それまで習氏は対米貿易戦争に集中し、香港のことをかまう余裕がなかったが、これからトップの主導で香港政策が展開される見通しだが、徹底できるか未知数も残る。

自分はこのスクープ記事は信ぴょう性が高いと見ている。「トラブルを引き起こした人に自ら片付けてもらおう」と怒られた対象は誰だろうか。自分の推測では、まずキャリー・ラム長官、続いて香港マカオ弁公室ではないか。その後の情勢の展開もこの推測に符合する。

9月5日、キャリー・ラム行政長官が移送条例の完全撤廃を発表した。これに関して、外部では、北京の反応が鈍く、冷たく、賛同していない模様と解説された。
⑥ RFA190906夜話中南海:外交部發言人態度變化證明香港林鄭已經失意於北京當局
https://manview.rfaweb.org/mandarin/zhuanlan/yehuazhongnanhai/gx-09062019191401.html
有香港媒體敏銳地注意到,當地時間9月4日,林鄭月娥發表了撤回修訂《逃犯條例》電視講話。但這則發生在傍晚18時以前的新聞,在晚間19時開始的中央電視臺《新聞聯播》卻只字未提。
相關報道中比較説:中国国務院港澳辦、香港中聯辦等機構,對於林鄭的4項行動未有任何官方聲明回應。形成鮮明對照的是,在此前6月15日林鄭宣布暫緩修例時,上述機構都是第一時間發表聲明,對其決定“表示支持、尊重和理解”。
以上のような、「北京側が条例の撤廃に賛同しない」とか、「行政長官が完全に信頼を失った」とかの解説が多いが、⑤のスクープに照らしてみれば、別の解釈が可能になる。
1、8月後半以降、香港情勢の収拾が特別行政区政府に一任された。だから北京が一々相談を受けたり、いち早く支持を表明したりすることがなくなった、
2、それまでキャリー・ラム長官が国務院香港マカオ弁公室を通じて北京と意思疎通をしていたが、そもそも後者が習近平主席から批判を受け、役割を果たせなくなった、
と見ることができないだろうか。

9月に入って、中国のマスコミが香港の財閥に矛先を向け始めた。未来が見えない住民特に若い世代に絶望感をもたらしたのは香港の「極端な資本主義制度」すなわち世界的に見ても異例な貧富の格差と一部の財閥への富の集中だと、『環球時報』編集長胡錫進の書いた論説が注目された。
⑦ 環球網微信公號190905胡錫進:香港人蝸居是極端資本主義的鍋,可惜他們恨錯了地方
https://china.huanqiu.com/article/9CaKrnKmFEE
写真付きで香港の低所得層の住宅事情を伝えた同WeChat記事は、香港の一人当たりGDPが高いが、貧富の格差が極端に偏っていること、多くの住民の住宅は北京の「蟻族」よりも狭いこと、財閥が自分の利益・利権ばかり考えて、住民の不満を作り出すことにも責任あることなどと糾弾した。

香港の内在的問題を厳しくしてきた別の記事もある。
⑧ 多維客190724香港街頭政治運動的三大根源及其解藥
http://blog.dwnews.com/post-1147917.html
この中で、米国のシンクタンクが毎年発表している「住宅価格負担能力の各国比較調査報告」の2019年版を引用して、一般家庭が購入可能な不動産の価格は香港ではその年数の20.9倍になっており、連続9年間世界のワーストワンと指摘されている。
美國國際公共政策顧問機構Demographia一年一度的《全球房價負擔能力調查2019》數據顯示,香港連續第九年排在全球最貴的房價榜首,屬於“極度負擔不起”之列,房價收入比達到20.9倍。這個數字意味著如果不貸款,香港人買房需要不吃不喝20.9年。
また、香港政府自身の統計によると、ワイホームをゆする家庭は49.2%に止まっている。
根據香港政府統計處發布的數據,截至2017年底,只有49.2%的香港本地家庭擁有所居住房屋的所有權,(中略)處在香港社會最底層的年輕人自然安居無望,這是香港年輕人對港府産生不滿和抗拒的重要源頭之一。
経済成長率の低下で雇用・賃上げもますます厳しくなっていると指摘。
數據顯示,20世紀70至80年代香港人均 GDP 增速維持在6%以上,而過去5年裏這一指標僅為3%。勞動階層和年輕人的就業機會有限。15至19歲青年失業率上升1.9個百分點,至12.2%。即便青年人實現就業,收入也鮮見增長。大學教育資助委員會數據,自1997年至2015年,大學生收入的平均數只由14,250元增加至18,583元,如果扣除通脹,增幅更只有7.5%。
中国側の分析に、大陸への不信感などの政治要因が抜けているが、経済と生活面の要因も大きいとの指摘はその通りだと思う。

長いものになったが、それでももう一つの、香港浸会大学栄休教授周国正の分析記事を紹介したい。
⑨ 香港新聞網191004如何理解香港事件的表像與本質
http://www.hkcna.hk/content/2019/1004/787569.shtml
香港動乱の内因と外部要因を幅広く分析し、香港と大陸との関係の行方のいくつかのシナリオを検証したいい論文だが、中国語が読める方にぜひ読んでいただきたい。

四 香港の行方
習近平主席が香港政策を主導してから、建国70周年に際して行った2回の演説で自らの香港ビジョンを示した。
10月1日に天安門広場での演説は極めて簡潔で、香港について、マカオと合わせて
「保持香港、澳门长期繁荣稳定」
と「その長期的な繁栄と安定を守る」、としか触れていないが、その前夜、人民大会堂で催された国慶節祝賀レセプションで行った演説では香港に関して結構長い言及があった。
① 新華網190930習近平:在慶祝中華人民共和國成立70周年招待會上的講話
http://www.xinhuanet.com/politics/2019-09/30/c_1125061785.htm
我們要繼續全面準確貫徹“一國両制”、“港人治港”、“澳人治澳”、高度自治的方針,嚴格按照憲法和基本法辦事。我們相信,有祖國的全力支持,有廣大愛國愛港愛澳同胞的共同努力,香港、澳門一定能與祖國内地同發展共進步、明天一定會更好!
この一節はかなり多くのニュアンスが込められたと思われる。
1、「一国二制度」「香港人による香港統治」「高度な自治」といった方針と、憲法と(香港)基本法に厳格に従うと強調された。香港の民衆が持つ「高度な自治」と自由がなくなる懸念を念頭に重ねた表明だ。
2、暴動、敵対勢力の介入といった表現が使われていない。
3、祖国の支持と現地同胞の共通した努力により、香港とマカオはきっと祖国各地とともに進歩し、明日はきっともっと明るくなるとの表現は、経済面の支援と協力を優先に、ほかの面も連帯して進歩していく、未来は悲観する必要はないとのメッセージを込めた。

もちろん、この表明だけで香港住民が鵜呑みにすることはあり得ない。現にその後も抗議行動が続いており、特に覆面禁止令が施行される10月5日の零時前、香港各地で「第二次大戦後最大の破壊」(前行政長官梁振英の表現)と形容される破壊活動が行われた。
「覆面禁止令」の発布で、日本のマスコミ大手はほとんど、「もっと反発を呼び、対立が激化する」と書いたが、自分はこれが収束に向かう転換点だと見る。強硬に見えるこの禁止令は、武闘過激派の人数が減っていること、大半の民衆から理解・連携されなくなっていることを見越して取った措置である。これまでの防戦一方から過激派に圧力を加えていく戦術の転換でもある。
「デモ行動時の覆面禁止」は欧米の大半の国でも決められており、別に香港で導入してはならない理屈は存在しない。奇しくも香港で施行された前後、台北市警察トップも「本市でも実施すべき」と表明した。
② 明報新聞網20191007台北擬禁遊行蒙面受質疑 柯文哲:應依法行政
https://news.mingpao.com/pns/%e4%b8%ad%e5%9c%8b/article/20191007/s00013/1570386993502/%e5%8f%b0%e5%8c%97%e6%93%ac%e7%a6%81%e9%81%8a%e8%a1%8c%e8%92%99%e9%9d%a2%e5%8f%97%e8%b3%aa%e7%96%91-%e6%9f%af%e6%96%87%e5%93%b2-%e6%87%89%e4%be%9d%e6%b3%95%e8%a1%8c%e6%94%bf
台北市警察局長陳嘉昌説要落實北市遊行禁蒙面惹議。警政署長陳家欽昨日説,集會遊行法雖有相關規定,僅針對少數和威脅公安者。市長柯文哲昨日受訪時為陳嘉昌護航,認為應依法行政,不要讓台北市警察為難。
台北市議会で、香港の覆面禁止令の施行に関連して市警察局長は、我々に関連の法律があるが、これから実施していくと答弁した。警察側はさっそくプレス発表を行い、覆面禁止の実施細則を説明した。一部の批判に対し、柯文哲市長は、警察局長側にたち、「警察を困らせてはならない」と語った。

では香港はどこに向かうか。香港問題の抜本的解決は簡単ではないだろう。時限爆弾を抱え続け、誰も出口を見出していない。ただ、過激化する一方の武闘派の最近の行動はそろそろ限界に来たと見ている。
自分の判断に、奇しくも抗議運動の熱烈支持者の最近の言動から裏付けられた。
③ RFI191006黎智英籲反送中冷靜:這不是硬拼的時候 梁振英批黎華麗轉身
http://www.rfi.fr/cn/%E4%B8%AD%E5%9B%BD/20191006-%E9%BB%8E%E6%99%BA%E8%8B%B1%E5%90%81%E5%8F%8D%E9%80%81%E4%B8%AD%E5%86%B7%E9%9D%99%E8%BF%99%E4%B8%8D%E6%98%AF%E7%A1%AC%E6%8B%BC%E7%9A%84%E6%97%B6%E5%80%99-%E6%A2%81%E6%8C%AF%E8%8B%B1%E9%BB%8E%E6%89%B9%E5%8D%8E%E4%B8%BD%E8%BD%AC%E8%BA%AB
壹傳媒集團創辦人黎智英今天呼籲“反送中”冷靜面對當前局勢。他説:“我們的策略不是以激烈的對抗贏取對方,而是以道德權威不屈不撓的精神消耗對方。現在是我們冷靜思考的時候。”香港前特首梁振英對此直指黎智英是華麗轉身的“鳴金收兵”,公開和黑衣暴徒切割。黎智英今天參加香港反禁蒙面法示威遊行,但沒有蒙面。
反体制、反中活動の「精神的リーダー」と呼ばれ、香港で少数に残る中国批判のメディア『壹週刊』と『蘋果日報』のオーナーである黎智英(リー・チーイン)が10月6日、「我々の策略は激烈な対抗で相手に勝つのではなく、道徳と不撓不屈の精神で持久戦を行うことだ。現時点は我々が冷静に考えるべき時だ」との談話を発表した。過激化した行動が一段と孤立化するのを見越して、「いったん冷静に考え直そう」と呼びかけた内容だ。それに対し、前長官梁振英は、これが黎氏の「華麗なる変身」で「鳴金收兵(撤収命令」だと揶揄した。

④ VOA191009居住香港近30載 一名美國人冀示威者看遠點
https://www.voachinese.com/a/An-American-Perspective-On-HK-Protest-20191009/5116565.html
親歷2014年雨傘革命的美國人簡伯奇(Glenn Berkey)這天來到記者所在的酒店接受專訪。
他認為政府和示威者都應該做出妥協,以免暴力升級。
他説:“我想説,政府應該允許(對警方的)獨立調查,抗議者也應該平靜下來。不管妳如何去實現,比如不使用汽油彈,不毀壞港鐵站裏的售票機,不要打爛公共場所的玻璃。”
2014年の雨傘運動に参加し、今回も抗議運動を支持してきた香港在住30年近くのアメリカ人Glenn Berkeyも記者に対し、双方とも妥協を考えるべきで、暴力のエスカレーションをまず防ぐべきと呼びかけたうえで、こう語った。
如果香港民衆願意進行一場長期的抗爭,他們也許最終會勝出。
簡伯奇説:“這需要時間。我明白這令人沮喪。人們想現在就改變。但是,如果他們做長遠打算的話,我想他們會贏,可前提是他們必須願意做長遠打算。
「香港の民衆は長期的に闘っていく心構えがあれば最終的に勝つかもしれないが、時間が必要。これ(抗議行動の中止)が人をがっかりさせるが、長期的な考えを持つべきだ」。この談話がこれまで香港問題でことごとく中国に批判してきたVOAのHPに掲載されたことも興味深い。

一方、香港財閥が動き出した。
⑤ 多維新聞網190928香港三大家族相繼無償捐地 李嘉誠表態不跟進善舉
http://news.dwnews.com/hongkong/big5/news/2019-09-28/60151022.html
香港の四大財閥のうち、新世界発展は9月25日、まず27万平米の土地を公共住宅と関連施設の建設に無償提供すると表明。続いて恒基兆業と新鴻基地産も9月27日、放置中の農地を回収して住宅建設に使用するとの政府方針を支持し協力すると表明。 残りの李嘉誠グループの広報担当も9月28日、土地提供の代わりに、寄付金供与の形で社会的公益プロジェクトを支援すると表明した。

NYTもこの動向に気づき、別の角度から、「北京は香港財閥にメスを入れた」と報じている。
⑥ 紐約時報中文網191002新一輪“鬥地主”?北京瞄準香港房産大亨
英文タイトル:China Plays ‘Fight the Landlord’ to Tame Hong Kong
https://cn.nytimes.com/business/20191002/china-hong-kong-li-ka-shing-business/dual/
中国の方針に批判的なトーンだが、やる必要性も認めている。
北京對李嘉誠和其他房地産大亨的指控並非毫無根據。長期以來,香港政府與富裕的房地産開發商之間的親密關系一直受到專家的批評,他們説,這種關系加劇了香港房價過高的問題。
Beijing’s accusations against Mr. Li and the other real estate tycoons aren’t groundless. The cozy relationship between the Hong Kong government and wealthy property developers has long drawn criticism from experts who say it worsens housing affordability.

いずれにせよ、これで四大財閥が揃って、香港住民が一番不満に持つ住宅事情の改善に協力を表明したことになる。その背後、習近平政権が今後、香港問題に関して貧富格差の是正、経済面の低所得層支援という形で本格的に取り組んでくる本気度を感じたと思われる。
一進一退が続くが、大きな流れはできたような気がする。

(終わり)

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