論稿「東論西遊」

[異なる視点論点⑧] 劉鶴は合意するためにDCに行くのではなかった 2019.5.13 <朱建榮>

異なる視点論点⑧(2019年5月13日)朱建榮(東洋学園大学教授)

劉鶴は合意するためにDCに行くのではなかった
――米中間のチキンゲームと中国の新しい戦法

 米中経済貿易戦争はエスカレートしている。ハイレベル交渉だけで11ラウンドも行われたが、今回のワシントンDCでの交渉も「物別れ」に終わり、双方とも追加関税を発表した。もう決裂かと思ったら、両国首脳部とも交渉は継続と表明している。では一体どうなっているのか。
まずこの参考消息を読んでくださる方々にお詫びします。これほどの「熱戦」が繰り広げられているのに、長く貢献せず、さぼってしまっている。ある研究プロジェクトの仕上げを担当しているのでその対応に追われ、余裕をなくしたのも一因だが、去年以来の中国の対米交渉の方針はつい最近まで、ほぼ予定の軌道で進んでおり、今回のDC交渉で妥結する可能性が高いと期待を込めて見守っていた。
ところが、今回の交渉過程を見て、中国の対処方針に変化が生じていることに、ついこの二三日に気づいた。今後の展開と攻防に関して別の見方も必要と考えている。よってここで、一連の最新の動向を紹介・解説しながら自分の新しい受け止め方をお伝えします。

劉鶴氏は何のためにワシントンに乗り込んだのか

まずおさらいしておく。去年6月以降、北京首脳部は、トランプ政権からの度重なる食言、合意破棄に憤慨し、米側が「以戦逼降」、すなわち降伏同然の譲歩を迫っていると判断し、「以戦止戦」(戦をもって戦を制する)という対抗の方針をいったん決めた。
しかし、10月3日のペンス副大統領の全面的中国批判の演説に接し、「米中間の新しい冷戦の回避」を最優先すべきとの新しい判断のもと、11月1日の習近平・トランプ電話会談、12月1日のブエノスアイレス首脳会談が行われ、さらに3か月間かけて交渉することが合意された。首脳会談当日に華為の孟晩舟副社長がカナダで拘束されたが、その第一報を受けながらも、習主席はトランプ大統領の前で糾弾せず、華為のことを二国間の経済貿易交渉から切り離して対処する、という大局重視の我慢の方針を取った。
それから、3か月ではなく、5か月経った。劉鶴副首相一行が5月7日にワシントンDCに向かう前、トランプ大統領は追加課税を突如発表し、ライトハイザー貿易交渉代表という「タカ派」のみならず、「温和派」とみられるムニューチンも「中国の翻意」と怒って批判した。中国代表団の訪米は中止かとの報道も出たが、劉鶴一行は予定通りに出発し、そして「合意なし」で帰途についた。DCを離れる前、劉鶴氏は記者会見で「双方間の合意は平等で互恵的なものでなければならない。重大な原則の問題において中国側は決して譲歩しない」と語った。

① 劉鶴氏、ハイレベル協議終了後に中国側の立場を表明-新華網190512
http://jp.xinhuanet.com/2019-05/12/c_138051847.htm
劉氏は、さらに「現時点で双方は多くの面で重要な共通認識にいたっているが、中国側の懸念する3つの核心的問題が解決されなければならない。第1に、追加関税を全て撤廃することだ。関税は双方間の貿易紛争の出発点であり、合意に達しようとするのなら、追加関税を全て撤廃しなければならない。第2に、貿易購入数量は実際に合致する必要がある。双方はすでにアルゼンチンで貿易購入数量について共通認識を形成した。恣意的に変えるべきではない。第3に文書の均衡性を改善する。どの国にも尊厳がある。合意文書は均衡あるものでなければならず、依然として議論の必要な鍵となる問題がいくつかある。昨年以来、双方の交渉には逆戻りが数回生じ、いくつかの曲折があった。これらは正常な事だ。双方の交渉は依然進行過程にあり、『後退』と恣意的に非難するのは無責任だ」と語った。
長い引用で恐縮だが、自分は、劉副首相が「物別れ」に終わった直後にこのような「強気」の談話を行った記事を細かく読んでやや戸惑いを感じた。慎重な性格を有する劉鶴氏はもともとこんな強硬発言をほとんど公の場でしないし、第一、北京首脳部の事前の了解がなくこんな発言をするはずもないと思った。
しかし、その後の中国側の一連の記事や評論を読んで、「劉鶴氏は今回のワシントンでの交渉が妥結できると最初から考えておらず、直後の談話発表は新しい方針と作戦の現れではないか」とハッと気づいた。

「極めて奇奇怪怪の第11ラウンド交渉」

かつて香港情報は「玉石混交」とよく言われたが、今日においては、石ころも混ざるが「玉」も入り、しかし間違いなく一番早く伝わる情報は、微信(WeChat)にある。まさに微信で複数のルートから、今回の第11ラウンドの交渉について以下の分析が転送された。

② 「特別奇怪的第11輪談判」
轉發友人的看法: 在中美長達半年多的11輪次的談判過程中,第11輪特別奇怪,前10輪的任何一次談判結束,中方首席代表均沒有公開接受媒體專訪表達善意,而這一次中方首席談判代表大範圍接受了中文媒體的專訪,而專訪所披露的幹貨相當多,這是非常奇怪的。而且,中方首席代表在談判破裂後,反復說我們談得很好,我們還可以談,我們一定會繼續努力的往下談,與此同時,國內的官媒們在談判破裂後,發表了非常簡短但耐人尋味的觀點《人民日報:願談則談,要打便打》。我們還看到更奇怪的現象,中國股市在禮拜五下午1:00只崩潰了5分鐘就瞬間被拉了起來,誰有那麽堅決的意志、那麽多的錢、在那麽短的時間就做出了這樣的決策?所有這些奇怪的現象放在一起就可以看到事情真正的本質就是:當中美談判進行時,美方通過了一些跟臺灣相關的法律,中國的戰略決策層意識到,用在經濟利益上的讓步來換取中美關系的戰略穩定的這個做法是不可能實現了,如果在臺灣問題上、南海問題上、5g問題上,美方已經展現出如此變本加厲的進攻態勢的情況下,中方在經濟上繼續大幅讓步,那中方就是自取其辱,而且會形成無法挽回的戰略損失!
所以,其實中方代表團在赴美啟程的時候,他們此行的主要目的就不是為了促成談判成功,而是要將談判不能成功的責任推給美方。中方首席談判代表在出發前強調誠意,在破裂後強調將繼續努力,其實就是在向全世界展現,中方並不是談判不能成功的責任方,而與此同時國內的媒體卻拋出了願談則談,要打便打這樣一個最直白的觀點。第11輪談判前,美方通過的那些跟臺灣相關的法律已經抽掉了這一次中美談判的互信基礎。中方已經意識到用經濟讓利來換取戰略穩定是不可能實現的,因此中方在代表團出發之前就已經在戰略層面統一了思想,這次出發的目的就是讓談判破裂的責任由美方來承擔,中方最高戰略決策層在最後一輪談判前關於中美關系的戰略判斷已經改變了,談判破裂是這種戰略決策改變後的表現。所以,中美的貿易談判以後就是一場表演而已,大家都散去吧!當戲看就好了!
要旨:
1、中国側の首席代表(劉鶴)が会談直後に多くの内容を披露した記者会見を開いたのは初めて。当日(金曜日)の上海株価が僅か5分間の下落後、大幅に上昇したのは不思議。人民日報などが立て続けに新しいメッセージを込めた論評を掲載したのも異例。
2、会談直前に、米議会で台湾問題に介入する一連の法案が採択された。経済面の譲歩で米国から台湾問題を含む戦略面の安定を求めることが不可能と認識し、方針転換が行われたのではないか。
3、ただ、経済貿易交渉がうまくいかないのはあくまでも米側の責任とのアリバイを作る必要もあり、劉鶴氏は予定通りに訪米した。しかし今回で妥結することを最初から期待せず、作戦を変えていた。「交渉は『パフォーマンス』に過ぎなかった(就是一場表演而已)」。

もっとも、この分析はあたかも中国側が米国との決裂を辞さず、再び去年6月の「以戦止戦」の方針に揺れ戻したかのようなニュアンスも含むが、その点には賛同しない。ただ、「パフォーマンス」説から、中国側の判断と交渉術に変化が生じたことははっきりと見えてきた。

「打打談談」(闘いながら交渉する)の新戦術か

交渉が終わった5月10日、新華社が次のような「国際論評」を発した。
③ 新華網190510國際時評:尊重彼此核心關切是解決好分歧的前提
http://www.xinhuanet.com/world/2019-05/11/c_1124479331.htm
如劉鶴所表示,中方需要有一個平等的、有尊嚴的合作協議。事實再次證明,尊重彼此核心利益和重大關切,是磋商順利推進不可逾越的“底線”和“紅線”;而確保雙方磋商地位平等、磋商結果雙贏,更是最終能達成協議的根本保證。如果始終一方壓著一方談判,或結果只能一方得利,磋商之路註定越走越窄。
據了解,目前雙方在取消全部加征關税、貿易采購數字應當符合實際以及文本平衡性三個中方核心關切的問題上仍存在分歧。
歷史和現實已經表明,打打談談或將是中美解決經貿摩擦的常態。中方堅決反對貿易戰,已經做好全面應對準備,也會理性對待後續磋商。就像馬拉松賽跑最後一程,接下來雙方會就協議文本逐條磋商,未來也將以更大耐心、更強定力看待中美經貿磋商反復博弈的可能,保持一顆平常心,做好應對各種風險挑戰的充分準備。
要旨:
1、中国は交渉に絶対にこれ以上譲歩しない「デッドライン」「レッドライン」を敷いた。交渉地位の平等、交渉結果のWinWinを保証しなければならない。
2、(劉鶴氏の説明と同じく)追加関税の完全撤廃、米国からの買い付けに合理性を持たせる、合意文書の均衡性、という中国側が「核心的問題」と見なす3点が相違点だが、中国側としては譲れない。
3、「打打談談」(闘いながら交渉する)は米中間の「常態」だ。今後はひらすら譲歩で妥協を求めるのではなく、貿易戦争を望まないが恐れず、米国への全面的な対処措置も整えた。
4、「平常心」をもって様々なリスクとチャレンジに対応していく。

よくもここで「平常心」に言及した。というより、作戦をちゃんと練ったとのニュアンスではなかろうか。

その上で、新華社は5月13日、「中国は全面的応対の準備を整えた」と題する「国際鋭評」を発した。
④ 新華網190513【國際銳評】中國已做好全面應對的準備
http://www.xinhuanet.com/world/2019-05/13/c_1124484516.htm
一邊威脅要對全部中國輸美產品舉起關税大棒,一邊又表現出繼續談判的意願,美方仍然試圖用軟硬“兩手”,對中方極限施壓,從而在談判桌上獲取更高要價。但是,仔細分析中共中央政治局委員、國務院副總理、中美全面經濟對話中方牽頭人劉鶴在第十一輪磋商結束後對媒體的表態,美方就應該十分清楚:中方對經貿磋商有三個核心關切,即取消全部加征關税、貿易采購數字要符合實際、改善文本平衡性。在這些原則底線問題上,中方決不會做出讓步。所以,不管美方怎麽“極限施壓”,過去對中方無效,現在和未來也必定無效。
合作是有原則的。中方的三大核心關切,實際上把經貿磋商的“紅線”與“底線”公之於眾,是絶不允許美方挑戰和逾越的。
如果美方執意繼續加征關税,中國必然會堅決反制。
中方早就看清,美方加征關税,實際上是一種“自殘式”的戰略豪賭,逆流而動,違背民意,必將徒勞。據美國“全球貿易夥伴”咨詢公司2月發布的一份研究報告,如果對2500億美元中國輸美產品征收25%的關税,一年將導致美國損失93.4萬個就業崗位,一個四口之家的美國家庭每年支出增加767美元;如果再對剩下的3250億美元中國產品征收25%關税,一年將導致美國損失210萬個就業崗位,一個四口之家的美國家庭每年增加支出2000美元。
作為貿易戰被迫反擊的一方,中國經濟必然會因加征關税而承壓,但這壓力完全是可控的。
從經濟結構看,消費對中國GDP增長的貢獻率達76.2%,出口依存度已下降至17.9%。
從貿易情況看,今年前4個月,中美貿易額下降了11.2%,其中對美出口下降4.8%,自美進口下降26.8%,這說明美國對中國出口的商品更有可替代性。同期,中美貿易順差擴大10.5%,這說明加征關税並不能從根本上解決中美貿易失衡問題,只會讓美國消費者承擔更高的成本。
此外,前4個月對美貿易占中國外貿總值的比例下降至11.5%,而中國與歐盟、東盟等主要貿易夥伴進出口額均保持快速增長。特別是中國與“一帶一路”沿線國家貿易額增速達9.1%,高出中國外貿整體增速4.8個百分點。這意味著中國外貿夥伴日益多元化,外貿抗壓能力不斷增強。即便美國對全部中國輸美產品加征關税,中國也可通過調整國際市場格局,把相當一部分對美貿易轉向其他地方。
所以,美國的極限施壓並沒什麽好怕的,反而是施壓越大,中國的定力越強。對於貿易戰,中國早就表明態度:不願打,但也不怕打,必要時不得不打。面對美國的軟硬兩手,中國也早已給出答案:談,大門敞開;打,奉陪到底。經歷了五千多年風風雨雨的中華民族,什麽樣的陣勢沒見過?!在實現民族復興的偉大進程中,必然會有艱難險阻甚至驚濤駭浪。美國發起的對華貿易戰,不過是中國發展進程中的一道坎兒,沒什麽大不了,中國勢必化危為機,借此來檢驗自身的能力,使國家變得更加強大。
無論外部風雲如何變幻,對中國來說,最重要的就是做好自己的事情,不斷深化改革,擴大開放,實現經濟高質量發展。美國下一步是要談,還是要打,抑或是采取別的動作,中國都已備足了政策工具箱,做好了全面應對的準備。
要旨:
1、米側の交渉戦術は、硬軟の両手で極限の圧力を加え、交渉の中でより大きな譲歩を引き出すことだ。中国はこの手に乗らず、デッドラインを設けることにした。
2、米側の追加課税の脅しは、「自残式」(自傷行為・Self-harm,self-injury)に過ぎず、効果がないどころか米国自身に損害を与えるものだ。
3、中国経済はその圧力に耐えられる。この4か月間、対米貿易額は11%以上減少したが、一帯一路沿線国家との貿易額は9.1%伸びた。中国経済の輸出依存度も17.9%に下がり、消費の貢献度が76.2%に伸びている。
4、だから中国の対応策は相手次第、交渉するならドアが開いているが、闘うなら最後まで付き合う。

背景的動向

このような強気の論調の背後に何があったのだろうか。
一部の左派が「習近平政権が米国に譲歩しすぎた」と攻撃している。そうではないと弁明する必要があると考えられる。
⑤ 中國絶不接受!美國對華談判13條霸王條款曝光 紅歌會190513
「紅歌会」の名前で発せられた「米側の覇権的な対中要求を絶対受け入れるな」というこの文書は微信ですぐ削除された。以下のウェブサイトで見つけたので、そのリンク先を紹介しておく。
http://www.xilu.com/20190513/1000010001090823.html?hot

4月末に開かれた第2回一帯一路サミットなどを経てEUを含めて世界各国との関係の発展により一層自信が増えたこと、シミュレーションを経て自国の経済面の損害もほぼカバーできること、との結論が見出されていた模様だ。逆に中国からは、米側の足元がぐらついでいるように見え始めている。
⑥ CNN190513米中首脳、G20で会談の公算大 カドローNEC議長が発言
https://www.cnn.co.jp/business/35136845.html
米国家経済会議(NEC)のカドロー議長は12日、米FOXニュースでのインタビューで、トランプ大統領と中国の習近平主席が来月、日本で開催されるG20の場で直接会談する可能性は高いと述べた。また米国の追加課税と中国からの報復によって「米企業や消費者に負担がかかる」ことを認めた。

5月12日のCNBC番組の報道によると、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)が直前に公表した報告書は、トランプの中国に対する去年以来の追加課税のコストは結果的に米国の企業と家庭に転嫁され、消費者価格に与える影響は予想より大きいと指摘。
⑦ 觀察者網190513高盛補刀:關税成本完全轉嫁到美國企業和家庭
https://m.guancha.cn/internation/2019_05_13_501331.shtml
英語原文:
https://www.cnbc.com/2019/05/12/goldman-trump-tariff-costs-fall-entirely-on-us-businesses-households.html?qsearchterm=THE%20COST%20OF%20Trump%27s

NYタイムズの記事は、「中国に、ハイテク企業への政府支援をやめさせることは無理」と分析した。
⑧ NYT190513中美貿易談判的棘手問題:産業補貼(中英文並列)
U.S.-China Trade Talks Stumble on Beijing’s Spending at Home
https://cn.nytimes.com/business/20190513/china-trump-trade-subsidies/dual/
米側から、“To expect the end of essentially a planned or a centralized economy would be awfully ambitious,” 「中央集権経済を終わらせるのは欲張りな願望か」との嘆きも出ている。
ちなみに、米側から「製造2025」をやめろとの圧力を受けて、その後、公の場ではほとんど触れなくなったが、もともとそれが「李克強プロジェクト」として最大限の重視を与えていなかったのに対し、「米国がこれを恐れている」と気づき、「むしろハイテク産業の発展を加速せよ」との号令が発せられたとも聞いている。

一方のアメリカは「赤狩り」ならぬ「中国狩り」に拍車をかけている。米国内の中国排斥の風潮は、「孔子学院」への圧力のみならず、文科系の中国の知米派学者にも及んでいる。
⑨ NYT190416擔憂間諜活動,FBI禁止部分中國學者進入美國(中英文対照)
F.B.I. Bars Some China Scholars From Visiting the U.S. Over Spying Fears
https://cn.nytimes.com/china/20190416/china-academics-fbi-visa-bans/dual/
中国の著名なアメリカ研究学者が相次いで米政府から10年有効ビザが取り消されたとNYTによってスクープされた。それによると、朱鋒・南京大学教授、呉白乙・中国社会科学院米国研究所所長ら日本でもよく知られる複数の学者は、「人民解放軍と関係があり、米国の情報を窃取する可能性がある」との理由でその処分を受けた。同記事は、スーザン・シャーク米カリフォルニア大学サンディエゴ校21世紀中国センター会長の言葉を引用して、「我々は、米国に最も素晴らしい友人たちを疎遠している」との懸念を伝えたが、多くの米国人学者はこの制限措置を支持しているとも報じた。直後に中国『環球時報』紙は、280人以上の中国人学者の訪米ビザがこの一年間取り消されたと伝え、「米国は中国の台頭で自信喪失に陥り、スケールの小さい国になり下がった」と社説で皮肉った。
この動きは中国から見れば、圧力でもあるが、米側が「焦っている」と見えて、かえって自信が増えた一面があるのかもしれない。

最近になって、米国の元外交官や政府関係者も、中国への圧力のかけ方が間違っていると指摘している。
⑩ 芮效儉:鼓吹美中敵對是糟糕戰略家 190508
http://hk.crntt.com/crn-webapp/touch/detail.jsp?coluid=1&kindid=0&docid=105420992&from=groupmessage&isappinstalled=0
美國前駐華大使芮效儉(J.Stapleton Roy)對中評社指出,東亞從來就不是由單一霸權所控制,中國也無法在那裡建立霸權。美國應當與區域國家進行妥當的接觸,那是不需要美中敵對的正常形態的外交競爭。他說:“那些一直鼓吹美中敵對的人,在我看來,是糟糕的戰略家、糟糕的亞洲歷史學生、糟糕的決策者。”
這位退休資深外交官是6日在美國和平研究所舉辦的“中國在朝鮮和談中作用”報告發布會上回答中評社記者提問時做此表態的。中評社記者問與會的芮效儉和前助理國務卿拉塞爾:解決朝鮮問題的結果將如何影響美國在東亞與中國展開大國競爭的思維?美國對華戰略競爭又會如何影響美國處理朝鮮問題的手法?
認為美中愈演愈烈的敵對可能影響中國在朝鮮問題上與美國合作意願的拉塞爾(Daniel Russel)指出,摩擦和敵對增多的美中關係與朝鮮問題之間無疑在相互作用,雖然美中從各自國家安全角度處理朝鮮問題並不應視為更大戰略敵對的體現,大家都相信美中合作是朝鮮半島形勢任何令人滿意結果不可缺少的成份。有理由相信,建設一個包含強勁的政策和戰略接觸、討論、協作的美中關係應當成為優先。
這位奧巴馬時期的白宮國安會東亞事務高級主任和助理國務卿表示,考慮到現在排斥的、偏執狂式地聚焦於貿易問題,美中政府之間協作、探索、合作的傳統機制基本上停擺,沒有戰略或外交對話,沒有正常的程序,那當然是讓務實合作更加困難的問題。如果美中關係繼續惡化下去,而且根本不清楚一個貿易協議能否阻止美中關係繼續朝向戰略敵對的負面向下螺旋,有理由相信,人們會看到美中在亞太地區或朝鮮半島爭奪統治或霸權的戰略競爭的加速。那將是非常令人擔憂的趨勢,絶對不是好事。
ロイ元中国大使は、東アジアは一度も単独の覇権に支配されたことがないし、中国がアジアで覇権を立てることは不可能なため、米中の敵対を鼓吹する人はでたらめな戦略家、不合格な政策決定者だと批判した。オバマ政権時代の国務次官補で中国に厳しい姿勢をとっていたラッセル氏も、今のような中国に対する圧力のかけ方は、北朝鮮の核問題をめぐる協調を壊し、結果的にピョンヤンが最も望む結果だと指摘した。

トランプ氏は「撿了芝麻,丟了西瓜」

トランプ氏の手段を選ばぬ圧力のかけ方が世界各地で反発され、ますます多くの国から距離を置かれている。中国批判で返り咲きしたマハティール・マレーシア首相だが、この3月、「South China Morning Post」紙のインタビューで、米中貿易戦争で二者択一が迫られたら、自分は豊かな中国を選ぶだろうと発言した。
⑪ 多維新聞網190309馬哈蒂爾:若真被逼選邊站 我選中國而不是美國
http://news.dwnews.com/global/news/2019-03-09/60122570.html

 では話が戻るが、今後、米中間の経済貿易交渉はどこに向かうか。以上に紹介した諸動きや中国のネットでの議論を踏まえて、次のような可能性が推測される。
1、 中国側は、対米戦略を変えていないが、戦術を変えた。これまでの数か月間、海千山千のトランプ氏を前にして「正直」になりすぎた反省から、「闘いながら合意を求めていく」方針に変えた。
言ってみれば、すでに米側が要求した内容の95%が合意した(トランプ氏の表現)が、中国側が残りの5%では譲歩しにくいし、身を切って素直に譲歩したら、トランプ氏から再度、「押し切ればもっと譲歩を引き出せる」と思われ、さらに新しい条件を持ち出されかねないと警戒した。そこで劉鶴氏の出発前、95%に合意した内容に修正を加え、例えの話だが、75%の合意内容に引き戻した。米側はこれで怒ったが、中国側が95%以上の5%の部分からさらに譲歩を引き出すのが難しいと悟ることになる。今後の1か月余り、「中国は95%に戻してもよいが、さらにそれ以上を求めたら破談だ、トランプ氏は95%を選ぶか、ゼロを選ぶか」が駆け引きの対象になる。
2、 「95%かゼロか」の二者択一を前に、米側内部で深刻な対立が生じると予想される。より厳しく中国に迫りたいライトハイザー氏やほかの強硬派と、再選を最優先するトランプ大統領との間に、距離が生まれるかもしれない。ではトランプ氏は何を選ぶか。中国から見れば、95%という美味しい譲歩を見捨て、大統領の再選を危うくする選択肢を彼が取れないだろう。
3、 中国国内は、これまで現指導部に対していろいろと不満もあったが、米国によるこれほど「理不尽」な要求に接し、求心力が生まれている。一方、当面、米国と真正面から対抗するのは得策ではないとの認識も広まっている。これを背景に、習近平指導部は、対米交渉でむしろフリーハンドを一段と握っている。
4、それでも劉鶴氏が挙げた3つの「譲歩できない」条件をめぐって、激しい攻防が予想されるが、中国側はこれに関しても一定の譲歩を最後の段階で見せる可能性があるのではないか。そのうち、「追加課税の維持」は引き続き、足枷を掛けられるようなもので絶対譲れないだろう。一方、買い付け額に関しては一定の交渉の余地を残し、合意文書に関しても「均衡」を求めながら詰めの幅を残している、と考えられる。
5、トランプ大統領はここ数日、一連のツイッターを発し、中国をけん制しているようだが、自ら焦って成果を欲しがっていることも露呈している。おそらく隔たりとして残った部分に関してはトランプ・習近平の電話会談などで詰め、大阪のG20の際の会談で合意を目指す可能性が高いだろう。

もちろん、これで妥結しても米中関係が大幅に緩和されることを意味しない。中国の台頭、追い上げを抑えるのが米国内のより広いコンセンサスを得た考えだ。それに対し、中国側は、我慢して戦争や新冷戦を避けてやっていけば、経済・技術ないし軍事力の面でも米国により接近し、対等になると読んでいる。米中間の「トゥキディデスの罠」はすでに始まっている。
この競争は、中国では毛沢東の言葉を借りて「持久戦」と呼ばれている。10年スパンで、米側との新冷戦を回避する戦略を貫きつつ、戦術面では対抗ではなく、ひたすら譲歩するのでもなく、「闘いながら妥協を求める」との新しい作戦方針を実行していく。当面は防御が中心だが、均衡局面ないし中国が主導権をとる方向への転換をぶれずに求める。トランプ大統領は自分の再選を最優先しており、商売人の発想でゴマを拾って喜んでいるが、世界での信頼・信用という大きなスイカを失っており、中国との駆け引きで中長期的には米国を最大のルーザーにしているのではなかろうか。中国語ではこれは「撿了芝麻,丟了西瓜」という。

(終わり)

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