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[異なる視点論点⑦] 「以戦逼降」VS「以戦止戦」―米中間のチキンゲームと中国の戦法 2018.8.20 <朱建榮>

異なる視点論点⑦(2018年8月20日)朱建榮(東洋学園大学教授)

 米中関係はこの一年、ジェットコースター(過山車)に乗るようなもので、アップダウンが実に激しい。特にここ1、2か月、ジェットコースターが急降下し、地面にハードランディングするのではとハラハラさせられている。一方、双方とも「お前が譲歩するまで俺は付き合うぞ」との典型的なチキンゲームを演じており、正面衝突の様相を見せ、中国の株式市場はじめ、各国の経済金融界、専門家を慌てさせている。

わずか4,5年前まで中国の台頭に余裕をもって接していた米国は、ここまで来て、相手の追い上げが予想以上に急であること、トランプ政権の「不可測性」にもより、本気に脅威を感じ始めたことは事実だ。ある友人が指摘した通り、米国はいつもはのんびりと構えるが、いざ慌てたら今度は極端に走る(中国も似たような行動パターン)。1950年のレッドバージ、1957年のスプートニク衝撃、レーガン大統領時代のスターウォーズ計画はいずれもそうだったが、今回もそれに近いパニック的反応が起きたようだ。

この短いコラムでは戦略的な分析をする余裕も力量もない。米中双方とも本気に正面衝突をする決意を固めておらず、かっといってかつてののほほんとした関係にも戻れないという点を前提と掲げたうえで、中国はどのように米側の意図、次の一歩を分析し、またそれにどのように対処しようとしているか、これについて、いつもの通り、注目記事を紹介しながら分析してみたい。

6月に「以戦止戦」の方針を決めた
 自分は5月の段階では、米側が仕掛けた貿易戦争に対し、中国側はトランプ政権の貿易面の要求にある程度譲歩し、同時に米国のエスタブリッシュメント層の中国叩きをかわそうとする、とのスタンスではないかとの視点を提起した。実はその後、中国の対米認識が大きく変わり、6月に入って、中央外事工作会議では韜光養晦論を軌道修正し、そして対米交渉では「以戦止戦」の方針を決めたと見られる。

中国側の一連の証言から、米中間の貿易交渉で3回も、いったん合意されたが、その都度米側に食言され、更に圧力を加えられたことで強い警戒感を持ち、対米認識と作戦の方針を変えるに至った、という経緯が見えてくる。

まず、台湾・香港と米国のマスコミで、中国社会で走る強い衝撃と対米不満が紹介された。
美中貿易沖突加劇之際的中國民間反應VOA180618
https://www.voachinese.com/a/news-how-chinese-react-to-trade-war-20180618/4443486.html

VOAが台湾系『林檎日報』の記事を引用して報じたところによると、いったん合意して中国から譲歩を取り付けたうえでまた合意を反故にして更に譲歩を求めるというトランプ大統領流のやり方に、中国の民衆は「約束を繰り返して破り、ヤクザみたい」と相当怒った、という。

トランプ政権の中国圧迫のやり方は中国語で「以戦逼降」と形容されている。貿易戦争、台湾カード、南シナ海問題などで中国に次々と圧力をかけて、降伏同然の譲歩を引き出そうとしていると受け止められている。

米側の関係者も、トランプが中国の無条件降伏を迫っていると見ている。
China retaliates with tariffs on $16 billion worth of U.S. imports after Trump’s latest trade hit – The Washington Post180808
https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/china-retaliates-with-tariffs-on-16-billion-worth-of-us-imports-after-trumps-latest-trade-hit/2018/08/08/167684ce-9b09-11e8-8d5e-c6c594024954_story.html?noredirect=on&utm_term=.9c0f87a892de

“Their plan may not be to get China to cry uncle. It may be pulling up the drawbridge. ”

“Trump has given China little wiggle room to save face and come to the bargaining table,” he said. “By continuing to up the ante, Trump is, in effect, publicly demanding an unconditional surrender from Beijing.”

最近のトランプ政権の対中交渉のやり方はあたかも1844年、中国に不平等条約を押し付けたようなものだとして、「中国はもはやかつての国ではないぞ」と強い反発が出ている
貿易戦是手段,全球霸權才是目的 – 海外網180813
http://theory.haiwainet.cn/n/2018/0813/c3542937-31374136.html

トランプ政権は取るだけ取って、当面は妥結する気持ちがないのだ、と見た中国側では新華社は6月17日付けで、「やむえず『以戦止戦』せよ」と題する論評を出した。
新華時評:以,不得不為新華網180617
http://www.xinhuanet.com/politics/2018-06/18/c_1122998447.htm

美方公然拋棄来之不易的共識,玩起反復無常的“川劇變臉”。在此背景下,中方不得不以其人之道還治其人之身。
對於美國的“變臉”,(中略)中方被迫應戦,以期以戦止戦,采取堅決有力措施維護自身正當利益。
強硬反撃、以戦止戦是對付好戦者的最好選擇。如果美方繼續恣意任性而為,損害兩國人民的長遠利益,中方必將繼續以其人之道還治其人之身。經過幾輪交手,美方應該認識到,中國對美方承諾的不確定性、對兩國經貿摩擦的長期性已做好充分準備。

トランプ政権の「宣戦布告」に対し、新華社のこの論評は「応戦布告」のようなものだと見ることができる。

同じ6月17日、元商務部の局長で、中國國際經濟交流中心總經濟師の肩書である陳文玲氏が講演で「我々の応戦は『和』(妥協、合意)のためで、戦わなければ『和』はないと承知している」と語った。
陳文玲:我們戦為和,不戦不能和,未来更危險的是中美金融戦!四月網180617
http://www.m4.cn/opinion/2018-06/1343145.shtml

我們考慮所有的問題,包括中美現在的貿易爭端和中美之間的博弈,實際上要考慮一個長周期的發展趨勢,怎麽才能把握這個趨勢,使中國的發展進程不被打斷,這一點是重大部署的把握的大局點。

因此,貿易談判美國是誰来談、美國誰當總統都無所謂,他們的任期是有限的,但歴史的長周期不能打斷。我們戦是為了和,不戦不能和,戦不贏不能和。

一方、陳氏は、トランプ政権は中国との貿易戦争を金融分野に拡大する可能性もあると指摘し、中国側はそれに関する覚悟と対策もできている、と触れた。

なぜ「以戦止戦」の方針を取るか

そもそも「以戦止戦」(英語:The war to end war)はどういう発想なのか。中国春秋時代の兵書『司馬法』の「仁本」編が出自で、
「殺人安人,殺之可也;攻其國愛其民,攻之可也;以戦止戦,雖戦可也」
が原文である。

殺人は良くないが、より多くの人の安全を守るために殺してもいい場合がある。戦を止めるのにどうしても必要なら戦をやっても良い
との考えである。

もともと老子に「兵者不祥之器、非君子之器」(戦争は極力避けるべき)の思想があり、『孫氏兵法』にも「慎戦」の一節があるが、「しかし仕掛けられた戦を止めるに戦で対抗する以外に選択肢がなければ戦っても良い」との歴史的経験と教訓もある。「以戦止戦」の目的は(貿易)戦争を止めることで、今回もトランプ政権に報復合戦に応じてもやむを得ないし、応じて初めて活路が見いだされる、とのの論旨である。

今回の貿易戦争で「以戦止戦」で対抗する以外にないとの考えを詳しく説明したのは上海東亜研究所副所長の以下の講演記録だ。
搜狐網180730中美貿易戦中國必贏?王海良:我不敢確定http://www.sohu.com/a/244179122_817469

王氏は次のように双方の立場と思惑を列挙して比較した。
1.美方打的是標——中國發展手段;
2.美方爭的是利——中國發展成果;
3.美方動的是本——中國制度根基。

米側が標的に掲げたのは中国の発展手段(対外輸出?)であり、手にしたいのは中国の発展の成果(巨大な市場?)であり、揺さぶろうとするのは中国の体制の根幹(中央政府による指導・奨励体制?)だ。

從中方的視角看,國人必須認清:
1.貿易戦涵蓋國内國外兩個大局;
2.牽動中國發展利益;
3.涉及核心國家利益(基本制度與國家安全);
4.影響廣大人民利益。

這說明貿易戦不是錢的問題。“凡是用錢能搞定的,都不是問題。貿易戦在美國與其他國家之間是錢的問題,但在中美之間就不是金錢之戦了,三輪談判都不管用,就是證明。”

一方、中国側にとって貿易戦争は対内と対外の両面と絡み、中国の発展の利益と関係するだけでなく、核心的国家利益(基本的社会制度と安全保障)および大半の国民の利益に係る、としている。三ラウンドの交渉・合意があったが、いずれも破られて一段と迫られたことで、中国は「もはや金銭上の譲歩で済まされることではない」ことを認識した、という。

 そこで「受けて立つ」ことになったが、持久戦の構えで勝つのを求めるのではなく、「両方とも敗者になる」見通しを示して最終的な妥協を求める、との考えだ。そして今回の大激戦を戦い抜いたら中国はかえって全世界から見直され、一段と上の存在に上がる。これが「以戦止戦」に踏み切った将来を見据えた読みのようだ。

ネットに、「対米貿易戦争に備える中国の内政と外交の長所と弱点」を分析した論文もある。「以戦止戦」に踏み切ったのはただ一時的に血が騒いだ衝動ではない。冷静に「敵を知り、己を知る」分析をした上での決断だったことが窺える。
中國當前戦略優勢與劣勢匯總 多維客180811
http://blog.dwnews.com/post-1046971.html

米中関係は「戦略調整を行う質的転換期」に入ったとして、米側の対中観の変遷を安全保障面から検証した上で、「決裂・対抗を望まない」が「主動・積極的な戦略的反撃」が必要との中国の安全保障問題専門家の提言も現れた。
華語智庫180813把控質變中的中美関係
https://mp.weixin.qq.com/s/PcF3WqigoZU2qnjbAsBWPQ

中国商務部國際貿易經濟合作研究院の専門家が書いた「総力戦と持久戦で貿易戦争に応じよ」と題する論文は「以戦止戦」の計算、進め方、中長期的な効果を詳しく分析した。
180808應對貿易戦要抱定打總體戦和持久戦的決心
https://mp.weixin.qq.com/s/jHeFXa6Bu8N-IZV6QLhWQQ

一方、貿易戦争の背景について「去年の党大会以来の一連の首脳部の言論が米側を刺激したため」との見方がある。それは完全にうそとは言えないだろう。さもなければ最近になって、中国側が自ら「厉害了,我的国(すごいぞ、我が国<の科学技術力>)」のドキュメンタリー番組の放送を途中でやめたり、「中国製造2025」という野心的な発展計画を言わなくなったりすることもあり得ない。ただ、そのような責任論を云々するより、「今更それを言っても仕方がないし、マクロ的に見れば、この衝突は早晩訪れるものだ」というのが中国体制側の共通認識になっている。それを如実に語ったのは8月9日付人民日報に掲載された「任平」との署名論文だ。
人民網180809美国挑起貿易戦的実質是什麼么?
http://politics.people.com.cn/n1/2018/0809/c1001-30220090.html

 これは精読する価値のある重要論文だ。「任平」とのペンネームは発音から判断して、「人(民日報)評(論員)」の意味であり、社説相当の重みがある。

同論評は冒頭に、「中国側の発言が米側を刺激したのがいけなかった」「早く米側の条件を受け入れて妥協すればよかった」との二説を並べる。

有一些似是而非的觀點在網上流布。一種是把責任歸咎於中國,說是“中國在戦略上‘過分自信和高調’,招致了美國的組合拳”;一種是批評中國不該反擊,說是“及早妥協讓步,貿易戦就不會愈演愈烈”。言下之意,只要中國服軟,美國就會“高擡貴手”,中美“貿易戦”也就不會打了。

事實果真如此嗎?

これに対する反論として、
1、米国は世界ナンバーワンの覇権を守るために、ナンバーツーの追い上げを絶対許さない行動パターンがある。「6割法則」と言われ、旧ソ連やかつての日本が米国の国力の6割に追い上げた時点でなりふり構わぬ打撃を受けて蹴り落された。中国はまさに今、そこまで差し掛かっている。

2、ここまで大きくなったのだから、ただ「韜光養晦」をするだけで逃げられるものではない。「一頭の象が藪の後ろに隠れても隠しきれない段階まで来ている」との表現が使われた。だから「以戦止戦」しかないのだ。

この論評の書き方がユニークであり、率直さがあり、原文の一読を薦める。

最後の部分では、「体が21世紀に入ったのに頭が前世紀に取り残されている」「陳腐な戦略」に固執してはG1の夢を取り戻せないし、「中華民族の偉大なる復興」を阻害できるものではないと強い表現を使っている。これらの表現には北京首脳部が米側の挑戦に「受けて立つ」ことを決意した悲壮感すらにじみ出ている。

「米国は短期に勝つが、長期では負ける」との読み

 中国国家統計局の前局長が米中貿易戦争の本格的突入による中国への影響として、「短期的にはマイナスの衝撃が大きいが、中長期的にはプラスが大きい」とシミレーションした。その講演用のPPT資料が中国の微信にスクープされた。
財經會議資訊180730國家統計局原局長邱曉華部定性中美貿易戦:國運之戦,短輸長贏!(完整PPT
https://mp.weixin.qq.com/s/7HlC3MRPoil4ECy96HV7Yg

実はトランプ流の圧力に対して、中国は簡単に譲歩できない「七つの理由」を、ハーバード大学のJeffrey Frankel教授がこの4月に既に分析している。中国語の以下の要約文はこの8月に出ている。
如是金融研究院180813哈佛大學教授反駁特朗普:中國不會讓步的七個理由
https://mp.weixin.qq.com/s/n-6tRxV4GqbG0KcZHTACAQ

原文は4月17日付「Project Syndicate」(PS,报业辛迪加)グループに掲載された。
https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-china-trade-war-lose-by-jeffrey-frankel-2018-04?barrier=accesspaylog

それは有料の閲覧サイトなので、翌18日の「Nikkei Asian Review」に転載された以下の全文を読むことができる。
Why China won’t yield to Trump – Nikkei Asian Review180418
https://asia.nikkei.com/Opinion/Why-China-won-t-yield-to-Trump2

ノーベル経済学賞受賞者でロコンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ(Joseph E. Stiglitz)は、米側が対中貿易戦争で負ける可能性が高いと指摘した。
諾獎得主:美國面臨輸掉貿易戦的危險斯蒂格利茨觀察者網180802
https://m.guancha.cn/SiDiGeLiCi/2018_08_02_466563.shtml?from=groupmessage&isappinstalled=0

英語原文は以下の通り。
The US is at Risk of Losing a Trade War with China by Joseph E. Stiglitz – Project Syndicate180730
https://www.project-syndicate.org/commentary/trump-loses-trade-war-with-china-by-joseph-e–stiglitz-2018-07

コラムニストのクルーグマンも、トランプの前近代的な戦い方では勝てないと指摘。
如何掉一场贸纽约时报中文网180709(中英文対照)
https://cn.nytimes.com/opinion/20180709/how-to-lose-a-trade-war/dual/

 8月に入って、NYタイムズに、「中国と経済的に戦うなら、インチキをせず、自分の遅れを他人のせいにせず、かつて旧ソ連のスプートニク打ち上げを受けてケネディー大統領がやったように、米国自身の産業・科学技術振興に力を入れるべきだ」との趣旨の話題を呼ぶ論文が掲載された。
中國的挑戦就是美國的機會紐約時報中文網180809
https://cn.nytimes.com/opinion/20180809/china-technology-trade-united-states/dual/

興味深い正論だと思うので、その原文と中国語訳を並列して一部分紹介する。

It would be a mistake to think that an aggressive defense alone will somehow prevent China’s technological success — or ensure America’s own.
如果認為靠咄咄逼人的防禦措施就能夠在一定程度上阻止中國的技術成功——或者確保美國自己的技術成功,那就錯了。

China is not an innovation also-ran that prospers mainly by copying other people’s ideas and producing them quickly at low cost. The country is advancing aggressively to assert technological supremacy in critical fields of science and technology.
中國並不是一個主要通過抄襲他人想法,並以低成本快速生産来實現繁榮的創新失敗者。它正在科技關鍵領域積極進取,努力取得領先地位。

In short, stopping intellectual property theft and unfair trade practices — even if fully effective — would not allow the United States to relax back into a position of unquestioned innovation leadership. Unless America responds urgently and deliberately to the scale and intensity of this challenge, we should expect that, in fields from personal communications to business, health and security, China is likely to become the world’s most advanced technological nation and the source of the most cutting-edge technological products in not much more than a decade.
簡而言之,阻止知識産權盜竊和不公平的貿易行為——即使是完全有效的——也不能讓美國輕而易舉地回到無可置疑的創新領導地位。除非美國緊急地小心應對這一挑戦的規模和強度,否則我們可以預見,在個人通信,乃至商業、健康和安全等領域,不出十年,中國很可能成為世界上最先進的科技國家,以及最先進科技産品的来源。

America’s response to Sputnik was that Americans became, for some decades, the best educated people on Earth, and we can do it again.
美國對蘇聯人造衛星的回應,使得幾十年来美國人成為地球上受過最好教育的人群,我們可以再做一次。

As a nation, the United States needs to change its focus from merely reacting to China’s actions to building a farsighted national strategy for sustaining American leadership in science and innovation. If all we do in response to China’s ambition is to try to double-lock all our doors, I believe we will lock ourselves into mediocrity. But if we in the United States respect China as a rising competitor with many strengths we can learn from, that view will inspire America to be its incomparable best.
作為一個國家,美國需要將重點從僅僅對中國的行動做出反應,轉變為建立一個有遠見的國家戦略,以保持美國在科學和創新方面的領導地位。如果我們對中國的雄心壯誌所做的一切不過是把我們所有的大門加上雙重大鎖,我相信那只會把我們禁錮在平庸之中。但如果我們美國人尊重中國,把它視為一個新興競爭者,有著許多我們可以借鑒的優點,這種觀點將激勵美國做到無與倫比地最好。

同じ日のNYタイムズ紙に、米中がWin-Winになる道もあると指摘した評論文も掲載された。
貿易戦兩條出路顯現,中美將走向“雙贏”?紐約時報中文網180809
https://cn.nytimes.com/business/20180809/trump-trade-china/dual/

 イギリスBBC放送の中文サイトに、中国は非関税障壁や人民元切り下げなどの方法でトランプがしかけた貿易戦争に対抗できると、中国では「中国のためにトランプ対策を提言してくれた」と評される論評が掲載し、それを紹介した「多維網」の記事には、中国と対立してきたオーストラリア首相は米中貿易戦争に関して中国の立場を擁護する発言をしたことも同時に紹介された。
如何打贏中美貿易戦 英媒罕見為北京支招 多維新聞網180809
http://news.dwnews.com/global/news/2018-08-09/60076618.html

日本の教訓をよく研究した中国の次の一歩

ここまで来て、米中間で経済摩擦をめぐる交渉が再開し、11月の米国の中間選挙直前に、トランプ・習近平首脳会談を行って妥結する道筋が模索されているとの報道が出た。ほっとするものだ。

ただ、中国は、中間選挙後まで紛争がずれ込むこと、戦線が一段と拡大することも想定して対策を取っている模様だ。その中で、「日本の教訓」がよく語られている。

米国がどのように日本の半導体産業の台頭を絞め殺したのか、その検証と総括が行われている。
美國是如何摧毀日本的芯片業的?坌鳥書齋 新浪博客180731
http://blog.sina.com.cn/s/blog_593ae7d70102yhf3.html

  1985年の「プラザ合意」が押し付けられたのち、日本の政府と企業はどのような対策を取り、その成功と失敗がどこにあるか、を総括した新華社記者の記事が人民日報に掲載された。
日本應對《廣場協議》的教訓和經驗 人民網180818
http://world.people.com.cn/n1/2018/0818/c1002-30236073.html

 その結論は、「ひたすら譲歩を重ねては肉食動物の米国を相手に解決にならない。米国からリスペクト(敬意)を勝ち取って初めて真の対等・合意が生まれる」、というもの。環球戦略智庫180811對美博弈的歴史經驗——必須贏得對手尊重https://mp.weixin.qq.com/s/bF-xTAZMj644aYDXHsxItw

 一方、「以戦止戦」の戦いは、自爆攻撃ではなく、相手の痛みを突きつつ、コントロール可能な範囲内に喧嘩をとどめることを常に留意し、最終的に米国のエリート層にある二つのグループ、「抑止派」と「接触派」のうち、後者との妥協・合意にこぎつけて活路を見出すべきだと、米国問題専門家で、北京大学国際関係学院の賈慶国院長が提言している。
賈慶國:關注貿易戦背後的美國政治生態變化中評社180812
http://hk.crntt.com/doc/1051/5/6/2/105156207.html?coluid=1&kindid=0&docid=105156207&mdate=0812001259&from=groupmessage&isappinstalled=0

余談

 日本でも、米中貿易戦争の本質を分析する記事と特集が現れている。たとえば、メルマガNEWS picksの「米中テクノロジー冷戦」特集。
NEWS picks180813【新】中国に怯えるアメリカ。世界とネットを揺るがす攻防https://newspicks.com/news/3236735/body/

その巻頭語で「中国のテクノロジー企業の爆発的な成長で、(米国)その圧倒的優位が揺らぎ始めている」「トランプ政権が中国製品に関税を賦課させたりしているのは貿易不均衡の是正だと見られがちだが、もう1つの理由が、中国のテクノロジー分野における急速な追い上げに対する危機感だ」と分析したところは的を得ていると思う。

ただ、「習近平がめざす『ネット強国』」について、ただ「国家の検閲と監視に利用されるデジタル社会」を作り上げるため、との色眼鏡をかけた分析だけでよいのか(日本の各メディアとも大体、このような視点で中国のネット社会をきめつけている)。当局の一部がそれを利用しようとする一面は否めない(実際には米英などの国もサーバー空間でははるか中国以上に国家監視体制を構築している、という真実も知るべきだ)。他方、ネット技術をめぐる競争は本質的には新しい産業技術力の競争の一環であり、それをリードすることは次の10年の各国間の技術競争構図にかなり有利なアドバンテージを与えるに違いない。長年にわたって中国社会は「無信用・非合理・不便」だと決めつけてきたが、突然ある日、「中国は日本より先にキャッシュレス(無現金)社会に入った」との驚きが走った。それでも中国のキャッシュレスの実現の背後に、全利用者から信用されるネットシステムの確立、合理性と利便性の実現、との本質的な分析はあまり見かけない。中国の「ネット強国」政策をひたすらこき下ろすだけでは、技術競争でもさらに水を開けられる、との可能性はないだろうか。

ネット社会はそもそも究極的にはコントロールされない性格を有する。中国社会全体の情報化と権利意識の台頭(実態は大半の日本人の想像以上)にとって、中国人の7割以上が使っているスマホが加速度的な原動力になっていることも忘れてはならない。中国の成長と社会的変化の行方について、もっと複合的に、内面的に、ロングスパンで捉えることができないだろうか。このテーマはいつか別の機会に取り上げることにしよう。

(終わり)

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