BIS論壇 No.227 『一帯一路とAIIB』 2017年6月5日 中川十郎
  • 2017.6.9

 5月の北京での「一帯一路」首脳会議に29カ国の首脳、70の関係国が参加して以来、「一帯一路」への内外の関心が高まっている。6月8日カザフスタンで開催の上海協力機構(SCO)首脳会議でも話題になると思われる。さきに本論壇で、英国、米国の地政学者や研究者のユーラシア重視の必要性をうたった学説を紹介したが、地政学の観点からも『一帯一路』戦略への日本の参入は国際通商戦略上も必須であると思われる。

 名著『資本主義の終焉と歴史の危機』に続き近刊の力作『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』の著者・水野和夫法政大学教授は同書で、海を制した18~19世紀のオランダ、英国、20世紀の米国に代り21世紀は陸を制するEU、中国、インド、ロシアが発展すると予測しておられる。まさしく「ユーラシアを制する者は世界を制する」時代の到来だ。 

 中国の「一帯一路」政策に対抗し、日本はインドーアフリカ会議を主催したインドと組みアフリカへの進出を画策しているという。この策はかって日本が中国主導の上海協力機構(SCO)に対抗し、Arc of Liberty and Prosperity(自由と繁栄の弧)政策をかかげて中央アジアを包囲しようとしたことと軌を一にしている。日本の隣に米国に匹敵するかそれを凌駕する巨大市場が誕生するのは自明だ。これらの動きに対抗するよりも、この趨勢に対応し、「一帯一路」や「AIIB」に協力する戦略を打ち立てることこそが、21世紀を見据えた日本の通商戦略であるべきだ。日本では「AIIB」「一帯一路」は中国の過剰製品のはけ口を狙う中国の戦略だとの批判的言動が主流だ。しかし一帯一路、AIIBともユーラシアの陸と海の交通網を整備し、世界人口の60%、GDP30%、貿易30%を超える沿線64か国のインフラ投資を支援。アジアからユーロッパへの巨大物流と貿易を拡大し、経済発展をめざし、21世紀のシルクロードを再構築するという壮大なプロジェクトだ。

 5月17日、ソフト・バンク孫社長が主導するアジア国際スーパーグリッド会議に参加した。この構想はモンゴルで風力、太陽光で発電した電力を国際送電線網を活用し、近隣のアジア諸国、さらに海底電線で日本にまで送電しようという壮大なエネルギー構想で、一帯一路計画に連動して、日本がリーダーシップをとれる国際プロジェクトだ。

 5月31日に国連大学で行われたトルコ会議に参加のトルコ投資誘致関係者もトルコは地の利を生かし、アジア~ヨーロッパを結ぶ一帯一路に積極的に参加したいと強調していたのが印象的だった。さらに6月2日、JETROで開催のコーカサスのジョージア共和国(旧グルジア)の投資説明会で、同国ズラブ外務大臣に一帯一路とAIIBに関するジョージアの対応を質問したところ、昔からのシルクロードの要衝であるジョージアは一帯一路に積極的に関与し、協力したいと並々ならぬ熱意を表明した。関係国のこれらの言動から判断し、一帯一路は沿線各国の21世紀の大プロジェクトとみなされていることがわかる。

 かかる趨勢に反し、一帯一路、AIIBに懐疑的な見方をし、参加を逡巡している日本はユーラシアの大きな商圏を取り逃がすことになるのではないかと杞憂に耐えない。

 安倍政権の中国敵視政策は将来の日本にとって大きな損失を与えることになるだろう。

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