BIS論壇 No.229 『SCO、一帯一路、AIIB、TPP、RCEP』 2017年6月10日 中川十郎
  • 2017.6.10

 

 6月8~9日カザフスタンの首都アスタナで開催の上海協力機構(SCO)第17回、首脳会議は2001年に中国、ロシア、中央アジア4カ国の6か国で創立以来、初めて、インドとパキスタンを加盟国に承認し、参加国が8カ国となった。
 これにより世界人口の40%、GDPの20%を占める巨大経済機構がユーラシア大陸に出現することになる。5月14~15日には北京で広域経済圏構想「一帯一路」首脳会議が19カ国の首脳、70の国際機関、140の国が参加し開催された。
 SCOが公表した成果文書で、「首脳らは一帯一路を歓迎し、成果を支持する」と高く評価したという。(日経6月9日)
 9月末には中国でBRICS首脳会議も開催される。77か国が参加する北京のAIIB(資本金1000億ドル)に加え、上海に本店を置くBRICS開発銀行(資本金500億ドル)、中國が全額出資するシルクロード基金(資本金400億ドルー近く約500億ドルに増資される予定)の3つの銀行が今後、世銀、ADB(アジア開銀), ERDB(ヨーロッパ復興開発銀行)などと協調融資し、ユーラシア、中央アジア、SCO、BRICS諸国への融資を積極化させるものと予測される。
 6月7日開催の世界銀行のTICAD(東京アフリカ開発国際会議)講演会「アフリカの急成長と経済の多様化:民間投資の機会と展望」での世銀アフリカ担当者発言によれば今後アフリカでもインフラ投資は増大するとのことで、ここでもAIIBと世界銀行の協調融資の可能性は高まるものと思われる。
 6月9日開催の「言論NPO」のTPP講演会「経済の自由化について(TPP11)」はパネリストに川瀬剛志・上智大学法学部教授、菅原淳一・みずほ総合研究所主席研究員、中川淳司・東京大学社会科学研究所教授、司会者:工藤康志・言論NPO代表で行われた。
 各位ともTPP11を日本が主導し、纏めれば、いずれトランプ政権もTPPに復帰するとの楽観的見方が大勢を占めた。またRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に関しても日本が先端的なTPP条項を活用し、RCEPで質の高いFTA(自由貿易協定)を結ぶべきだとの結論であった。後発国、途上国も多いRCEPに自由化度の高いTPPの条項を認めさせることは、
 カンボデイア、ラオス、ミャンマーなどにとって至難だし、また農業従事者の多い中国、インドにとっても簡単には受け入れられないと思われる。
 日本がTPP11を主導し、TPPが11カ国で発効すれば、米国もいずれTPPに復帰するとの楽観的な見方は問題ではないか。
 5月25日東京でのコロンビア大学セミナーで来日した国際政治学者として著名なジェラルドカーテイス・コロンビア大学名誉教授はTPPはDead(死んだ)。トランプがTPPに復帰することはありえないと発言した。日本のTPP賛成学者や評論家のTPP楽観論は日本の立場からの一方的見解でアジア的立場からの冷静な判断が望まれる。アジアの発展途上国にも適した条件で死んだTPPに固執せず、アジア地域のRCEP推進に全力を注ぐべきだ。

 

関連記事